構想力を磨いてイノベーションを起こす

 このような時代に、あなたなりの価値を生み出していくにはどうしたらいいのでしょうか。それには、まず構想力を身につけることです。真のプロフェッショナルは構想力を持っているので、イノベーションを起こして他者と差別化することができます

 世の中ではイノベーションという言葉が頻繁に使われていますが、本連載では意思決定のレイヤーを以下のように整理したいと思います。下図ように、意思決定にはイノベーション、ストラテジー、オペレーションの3つのレイヤーがあります

 イノベーション(変革)とは、ある組織が初めて実行することです。決して、世界で初めて実行することではありません。例えば、1店舗しかないコンビニエンスストアが2店舗目を出店するのはイノベーションです。また、10店舗まで増えて、次にフランチャイズ展開する際にはそれもイノベーションです。

 その組織にとってはフランチャイジーを探して、審査して、契約するというのは全て新しい経験となります。それらの意思決定にはトップ自らが関与する必要があります。トップ自らが意思決定する必要があることは、イノベーションに該当します。

 しかし、フランチャイジーが増えて責任者を配置し、様々な意思決定をその責任者に委譲できるようになったら、それはストラテジー(戦略)となります。

 また、さらにフランチャイジーが増えてマニュアルなども整備されてくると、誰でも判断できるようになります。どうやってフランチャイジー候補を集めるのか、どの条件を満たしていればフランチャイジーとして認めるのか、支払い条件はどうやって決めるのかなどは全てマニュアルに規定できます。これはオペレーション(運営)と呼ぶことができます。

 まとめると、ある組織にとって新たな取り組みを実現することがイノベーションで、それをゼロから設計するためには構想力が必要となります。

 本連載のテーマであるアジャイル仕事術の本質は、構想力を持っていることと言ってもいいでしょう。アジャイルは俊敏などと訳されることが多いですが、俊敏に動けるのは一つ一つの動作が速いからではなく、自分の考えや指針がしっかりしているので、素早く決断できるからです。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。
2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。
現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
IGPIグループを日本発のグローバルファームにすることが人生の目標。
細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。
超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。