金融界においてコンサルティング大手アクセンチュアの存在感が、かつてないほどに強まっている。特にデジタルトランスフォーメーション(DX)の知見や人材が乏しい地方銀行は多額の報酬を払って支援を仰ぎ、「高級文房具」とささやかれるアクセンチュアに完全に依存し切っている。特集『金融DX大戦』(全22回)の#1で、その実態を探った。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
「高級文房具」にすがって思考停止に
金融界に鳴り響く「DX狂騒曲」の実態暴露
「うちの経営企画は“高級文房具”に依存して思考停止に陥っている。非常にまずい状態だ」
ある地方銀行の幹部はそう言ってため息をつく。幹部が言う「高級文房具」とは、コンサルティング大手のアクセンチュアを指す。それこそ億円単位の高額フィーを支払わなければ使えない文房具である。
新型コロナウイルスの感染拡大で非対面サービスが一般化し、金融業界でもDXの機運が高まっている。実際、あらゆる銀行サービスがスマートフォン上で完結するデジタルバンクを設立したり、システムのクラウド化に踏み切ったりする地銀も現れ始めた。
だが、多くの地銀では「何から手を付ければいいのか分からない」(冒頭の幹部)のが現実だ。頭取の号令で経営計画に「DX」の文字が書き込まれ、DX担当役員を設置する地銀は増えたが、肝心の実行部隊が見当たらない。
いきおいアクセンチュアに依存せざるを得ない。アクセンチュアは金融機関に特化した金融サービス本部を持ち、DX支援に関しては他の追随を許さない圧倒的な陣容を誇る。
だが、そのアクセンチュアに依存した地銀はなぜ「まずい」のか。
ダイヤモンド編集部は、金融機関を対象にこれまで実行してきたDXの具体的支援の内容と進捗状況、人材面の課題などについて、アクセンチュア日本法人に取材を申し入れた。
これに対しアクセンチュアは「プロジェクトが多過ぎて忙しい」ことを理由に拒否した。彼らの重要顧客である金融機関は取材に応じ、説明責任を果たしたにもかかわらず、である。
だが「忙しい」のは口実ではなく、真実なのかもしれない。
実際、多くの地銀から依頼が舞い込み、「断るケースも増えている」(アクセンチュア関係者)という。アクセンチュアといえば今年3月、社員に違法な長時間労働をさせたとして、労働基準法違反容疑で東京地検に書類送検されたばかりだ。まさか大量の案件をさばくために違法残業の強要を続けるわけにはいくまい。
DX支援を仰ぎ、アクセンチュアの前に鈴なりに並ぶ地銀。思考停止のままやすきに流れれば、必ず「落とし穴」にはまるのが世の常だ。それに気付き、アクセンチュアとの契約解除を検討する銀行も現れている。
金融界に「DX狂騒曲」が鳴り響いている。その実態を探った。