聞いたことのない親戚の名前が出てくるなど、NHKのドキュメンタリー番組『ファミリーヒストリー』さながらの興味深い展開もあり、最終的には必要な戸籍謄本と原戸籍謄本が全てそろったのですが、「令和の今でも紙の戸籍をたどっていくようなことをしなければならないのか」という点では愕然としました。

理想は一度の届出で全ての手続きが
終わるワンストップサービス

 誤解のないように申し上げておくと、年金事務所の担当の方をはじめ、自治体の方もほかの機関の方も、皆さん、とても親切に手続きの方法を教えてくださいました。ただ、私の方でもすべての手続きを1人でやらなければならず、1つの手続きを終えると次にできる手続きが現れたり、後回しにしていた手続きの期限が迫っていたりして、次から次へとしらみつぶしにこなしていくのは大変だったわけです。

 私としては、金融機関などの民間企業はともかく年金や介護保険、医療保険などの公的サービスにおいては、願わくば、死亡届を提出したら情報が共有され、全部の手続きが自動的に行われてほしいものだとつくづく思いました。しかし現実には1つ1つの書類を手書きしなければならず、「昭和かよ!」と叫びたくなるような状況が残っています。新型コロナ対応でも「IT後進国」と言われ、開き直ったかのように国もそれを認めていますが、本当に進んでいないということを身をもって感じさせられました。

 行政書士や司法書士などの士業の方に手続きを依頼することもできるとは思います。ただ、それでも届け出や手続きをする本人でなければできないことがいくつもあって、結局本人の負担はかなりあります。

 縁起でもない言い方になりますが、今後ますます日本では大量に人が死んでいく時期にさしかかろうとしています。人口ピラミッドの中でも最も多い年代が、徐々に寿命を迎えていくからです。すると、その子どもの世代、ちょうど私のやや上の世代から私ぐらいの50代から60代前半ぐらいの方々が、親の死後の手続きをいろいろとしなければならないわけです。