「プーチン水攻め」結実、ロシアへ“無制限の協力”の中国も激減させたもの安全保障会議に臨むロシアのウラジーミル・プーチン大統領 Photo:JIJI

ロシアに対する国際制裁が機能していないのではないかという懸念が渦巻いている。しかし、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を確実に追い詰めていることを示唆するデータもある。習近平国家主席がロシアへの「無制限の協力」を公言した中国ですら、ロシアに対する「輸出」を激減させているのだ。それがプーチン大統領に与えるダメージについて、調査結果を踏まえながら考察したい。(イトモス研究所所長 小倉健一)

「ロシアを柵で囲うことは不可能」
プーチン大統領の言葉は真実か?

 ウクライナによる必死の抵抗は続くが、「ピョートル大帝(ピョートル1世)の栄光」を信奉するロシアのウラジーミル・プーチン大統領はますます自身の信念を深めているようだ。

 プーチン大統領は、6月、モスクワで開催された「ピョートル1世生誕350年記念展」を見学した。その後、ロシアの若い企業家とタウンホール形式の会議を開き、冒頭で18世紀のスウェーデンとの戦争でバルト海沿岸を征服したピョートル大帝について振り返った。

「ピョートル大帝が征服した土地は、正真正銘のロシアである」「ピョートル大帝が占領した土地にサンクトペテルブルクを建設したとき、ヨーロッパのどの国もロシアのものだと認めなかった」「しかし、そこには昔から(ロシアの人口の多数を占める)スラヴ系民族も住んでいた」「ピョートル大帝は何も奪っていない。取り戻したのだ」

 プーチン大統領は、肘掛け椅子にもたれながら、「ウクライナ戦争でもロシアは同じことをしている」と笑顔で話している。モスクワにある大統領の執務机の脇には、ピョートル大帝のブロンズ像が置かれているという。

 ピョートル1世は、ロシア最初の皇帝だ。開明的だったとされ、サンクトペテルブルクに欧州の文化を取り入れ、ロシアに西洋の技術や文化をもたらし「欧州の窓を開いた」ことで知られている。

 一方、現在のロシアは、ウクライナへの侵攻の結果、西欧諸国の猛反発に遭い、厳しい経済制裁が課されている。

 しかしプーチン大統領は、その記念展で「ロシアはソビエト連邦のように世界から自らを閉ざすことはない」「米国や欧州連合(EU)がロシアとのビジネスを望まないとしても、アジア、ラテンアメリカ、アフリカの国々はビジネスを行うだろう」とも述べた。そして、「ロシアのような国を柵で囲うことは不可能であり、われわれ自身もそのような柵を設置するつもりはない」と話している。

「私は、ピョートル大帝と同じで、領土侵略をすると同時に開明的な指導者なのだ」と言いたいのだろう。

 プーチン大統領が話したように、ロシアを「柵で囲おう」とする国際的な経済制裁は機能していないのではないかという疑念が渦巻いている。その大きな抜け穴の一つと目されているのが中国だ。

 しかし、実はプーチン大統領を確実に追い詰めていることを示唆するデータもある。習近平国家主席がロシアへの「無制限の協力」を公言した中国ですら、ロシアに対する「輸出」を激減させているのだ。そのことがプーチン大統領にどれほどの打撃を与えるのか。調査結果を踏まえながら考察したい。