社長! 売上至上主義だとあぶないですよ!

 いつまでも、「売上を上げろ!」と社員を追い込む社長は、会社自体の大きなリスクを抱えていることに気づくべきです。

 いわば、利益を出すのは、リスクヘッジ。

 売上を上げようとしたら、単価を上げるか、客数を増やすかしかないですが、単価を上げると当然、社長も社員も精神的な負担は高まります。

 お客としては「単価を上げたのだから、もっとサービスをしてよ」と思うのが心情。

 もし対価に値するサービスができなければ、当然、お客様の不信感が高まります。

 ならば、「売上! 売上!」と叫ぶより、売上は変えずに、社内の負担コストを減らしていくほうが会社のリスクヘッジにはよっぽどいいんです。

 売上基準に考えると、すべてが変な方向に行きがちです。

 会社の目的は継続性にあります。

 そのために必要なのは売上より利益。

 目的は利益なはずなのに、なかなか赤字のお客様を切れない企業は多い。

 ただ、この問題を放置していくと、ゆくゆくは社員のメンタルを直撃します。

 おもいきって赤字のお客様を切れると、社員のストレスが減り、ある日突然、頼りにしていた社員が辞めるという、社長にとっての最大リスクが減るのです。

 売上ではなく利益を注視していくと、社員がやめずにずっとわが社にいてくれるありがたみに気づくと思います。

 特に中小企業の場合、たった一人、メンタルダウンで抜けてしまったら立ちいかなくなる会社もたくさんあります。

 リスクヘッジの意味でも、利益重視の大切さがさらに高まるでしょう。

すべての仕事より優先すべき本

――たしかに、そういうリスクは日々高まっていますね。

 経営者の中には、P/Lは見るがB/Sを見たことがない人も多いと聞きます。

 わかりやすい売上ばかり見ずに、わかりにくい利益を見るためのファーストステップはどんなことをしていったらいいでしょうか?

山田:そこがすごく難しいので、手っ取り早い効果的な方法は、すべての仕事より優先して、この本を熟読することです。

 もし社長が本嫌いなら、経営幹部や管理職にまず読ませて要点を整理させる。

 社長が本好きならまず熟読して要点をメモする。

 その後、幹部や管理職にも読ませつつ、社内で読書会をやってみる。

 すると、違った視点から自社に必要なものが見えてくる。

 そのサイクルを一般社員までまわしていき、社員自身が、「そうか! 売上じゃなく利益だよね」という会話がふつうにできるようになったら、社風、文化として浸透したということじゃないでしょうか。

 ただ、そこまでいくのは本当に、ほんとうに、大変ですが、社長の覚悟、経営幹部の覚悟で会社は変わるのです。