優れたリーダーはどのように考え、行動しているのか?
リーダーにとって必要な資質や能力を高める、100の習慣を大公開!
本連載の著者はこれまでに国連や世界銀行グループ、政府、学校など様々な組織のリーダーへ、コーチングをおこなってきた、英国の超一流コーチ、ナイジェル・カンバーランド氏。
その経験から導き出した、リーダーとしての成功に近づくために欠かせない考え方や習慣、スキル、人間関係、行動をまとめたのが『ありのままの自分で人がついてくる リーダーの習慣』です。本書の刊行を記念し、その内容の一部を特別公開します。
では、さっそく、よりよいリーダーになるための一歩を踏み出しましょう。

ありのままの自分で人がついてくる リーダーの習慣Photo: Adobe Stock

成功するリーダーは部下に考えさせ、
成功しないリーダーはすべて教えたがる

 リーダーが助けを求められるたびにチームにアドバイスや解決策を与えるのは、当然のことのように思えます。たしかに、次のような場合には、この指示的なリーダーシップスタイルを用いるべきです。

・チームに加わったばかりの新メンバーが、指導を必要としている
・顧客への対応など、緊急に解決すべき重要な問題があり、リーダーの迅速な決断と指示が求められている
・複雑なタスクやプロジェクトに取り組む必要があるが、それを実行できる知識や経験がリーダーにしかなかった

 しかし、これをあなたの唯一のリーダーシップのスタイルにすべきではありません。なぜなら、問題を解決するための答えや方法をすべてリーダーが示していると、チームは自分で考えようとしなくなるからです。この方法をとったために、間違った答えが導かれることもあります。

・メンバーが自分で考える力が身につかない。甘やかされているように感じて不満を抱いたり、「リーダーが指示を出してくれるから」と楽をしようとしたりする
・あなたが問題や課題を誤解し、チームに間違った答えを教えてしまう。その結果、深刻な事態を招く可能性もある

 優れたリーダーは、状況に応じてリーダーシップのスタイルを使い分けられます。ときには、部下が問題を自ら探り、理解し、自分なりの解決策や答えにたどり着けるように答えや解決策を示さないことも必要です。その場合は、相手へ尋ねることに重点を置いた指導方法をとることもあります。

「GROW」のフレームワークで対話する

 チームが自分自身で課題や問題の解決策を見つけられるようにサポートしましょう。その際、コーチのジョン・ホイットモアが提唱した「GROW(グロー)モデル」と呼ばれるフレームワークを用いると効果的です。

目標の明確化(Goal)
 まず、問題や課題、疑問、挑戦が何であるかを探ることから始めます。次のような質問をしてみましょう。
「問題や課題は何か?」
「なぜいまそれに注目すべきなのか?」
「その問題や課題はなぜ解決しなければならないのか?」
「どうすればうまく解決できるか?」

現状の把握(Reality)
 つづいて、チームが問題や課題の背景や経緯を探るのを助けるために、次のような質問を投げかけましょう。
「それはいつから問題になっていたのか?」
「他に気づいている人はいるか?」
「以前に解決しようとしたことはあるか? そのときはどうだったか?」

選択肢を探る(Options)
 問題や課題の現状を把握したら、次はそれを解決するために有効な選択肢を探ってもらうために、次のような質問をします。
「もし誰の助けも借りずにこの問題を解決するとしたら、何をするか?」
「解決策のアイデアはあるか? それともどうすればいいのかわからずに途方に暮れるか?」

実行への具体的な意思(Will)
 解決策の検討を終えたら、次のように尋ねて会話を終了します。
「これから具体的にどうするのか? どの選択肢を実行するのか?」
「選択した方法を実行するために、どのような支援やサポートが必要か?」

「GROW」モデルに従った会話をしていると、いくつかの新しいアイデアが出てくるはずです。まず相手がそれらを出した後で、あなたの経験や知見に基づいたアイデアを提案するようにしましょう。どの選択肢が最善かについても、相手が自分で結論を導けるようにサポートします。

(本稿は、ナイジェル・カンバーランド著、児島修訳『ありのままの自分で人がついてくる リーダーの習慣』を抜粋、再構成したものです)

ナイジェル・カンバーランド(Nigel Cumberland)
作家、リーダーシップ・コーチ
1967年、イギリスのヨーク生まれ。ケンブリッジ大学卒業。世界最大級の人材サービス会社Adeccoや世界3大ミシン糸メーカーCoats plcで財務部長を務めた。シルクロード・パートナーシップの共同創立者。ロンドンとドバイを拠点に、同社を通じて企業幹部を対象にリーダーシップ・コーチングやメンターリングをおこなう。ハーバード大学メディカル・スクール付属コーチング養成機関の創立研究員でもある。これまで香港・ドバイ・ブダペスト・サンチアゴ・上海・ドバイで暮らし働いた経験から人生で成功するヒントを得た。これまでに出版した8冊の著書は、ドイツ・中国・ポルトガル・スペイン・ロシア・チェコ・スロバキア・ルーマニア・ドバイをはじめとする中東諸国・ブラジルなどの各国で翻訳されている。著書に、シリーズ10万部突破の『成功者がしている100の習慣』『お金持ちがしている100の習慣』(ともに児島修訳、ダイヤモンド社)などがある。
児島 修(こじま・おさむ)
英日翻訳者。
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。訳書に『成功者がしている100の習慣』『お金持ちがしている100の習慣』(ともにナイジェル・カンバーランド著)、『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』(モーガン・ハウセル著)、『DIEWITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著)(いずれもダイヤモンド社)など。