大切なのは「自分なりの年金戦略」を立てること

 そのポイントとは、加給年金は、「老齢厚生年金に付随して支払われる」ということ。夫が「遅らせれば受給額が増えるから」と安易に老齢厚生年金の受給開始を繰り下げてしまうと、その待機期間中は「加給年金も支払われない」ことになる。

 例えば、10歳年齢差がある夫婦で、夫が65歳から繰り下げずに老齢厚生年金を受給すれば、妻が65歳になるまでの10年間、加給年金が夫の老齢厚生年金に付随して支払われる。

 しかし、夫が老齢厚生年金の受給開始を仮に75歳まで繰り下げてしまうと、夫が老齢厚生年金の受給を開始したときには、妻はすでに65歳に達してしまう。つまり、加給年金は支払われない。10年間分の加給年金は約400万円にもなる。これだけの金額を受け取れないとなると夫婦の年金戦略にとっては大きな痛手となるだろう。

 年金大改正によって、年金の受給開始を遅らせれば遅らせるほど、受け取る年金額が増える仕組みになった。しかし、やみくもに受給開始を遅らせれば、生涯にわたって受け取る年金の総額を多くできるわけではない。「何歳まで働いて、何歳から年金を受け取るのか」を「自分で決める」時代となった。今、求められているのは自分なりの年金戦略を立てることだ。その戦略を立てるにあたっての基本的な考え方やポイントを著書『結局、年金は何歳でもらうのが一番トクなのか』で説明している。ご興味のある方はぜひ手に取っていただければ幸いである。