岸田政権に求められる外交政策
是々非々の姿勢を引き継ぐべき

 東南アジア各国との関係強化は、岸田政権の喫緊の課題だ。今、世界情勢は急激に変化している。岸田政権は、安倍政権以上の情熱をもって俯瞰外交を強化しなければならない。

 まず、安全保障面では米国との関係をさらに強化すべきだ。台湾海峡の緊迫感が急速に高まっているからだ。中国海軍は3隻目の航空母艦である「福建」を進水した。福建には、スキージャンプ台方式ではなく、電磁式カタパルトが搭載されている。艦載機の運用能力は格段に向上しているようだ。

 21年秋、英国は最新鋭の航空母艦であるクイーン・エリザベスを極東地域に派遣した。ドイツもフリゲート艦をわが国に寄港させた。それだけ中国の海洋進出に警戒感が高まっている。

 ウクライナ危機は長期化する恐れが高い。天然ガスなど資源価格高騰などによって欧米では人々の不満が急増している。そうした状況下、世界の半導体供給地である台湾をめぐる緊張が高まれば、世界情勢は混迷を極める。岸田政権は今一度、米国や欧州各国と関係を強化し、インド太平洋地域の安定に万全を期さなければならない。

 アジア外交に関して安倍氏は、毅然と、是々非々の姿勢で各国に向き合った。岸田政権は、その姿勢を引き継ぐべきだ。その上で、貿易や直接投資の促進など民間レベルでの連携強化は「是」、力による現状変更は「非」、といった考えを実行に移せばよい。

 言い換えれば、国際世論におけるわが国の立場を明確にする。それが各国からの信頼獲得に欠かせない。

 エネルギー資源や穀物などの価格が上昇し、食糧危機の様相を呈す国が増えた。各国で電力と水の不足も深刻だ。いずれの分野においても、アジア新興国の多くが、わが国の生産技術やインフラ技術をより必要としている。

 岸田政権は各国の要請にこたえなければならない。それができれば、わが国はアジア新興国地域との関係を強化し、国際社会での発言力を強化することができるはずだ。