売れるCMに隠れた4つの仕掛け、「菌がこんなに沢山…」ネガティブ表現なぜ入れる?写真はイメージです Photo:PIXTA

「CMを見て、つい買ってしまった…」という経験はないだろうか。実は、身近なテレビCMは、ビジネスを有利にするノウハウの宝庫だ。15秒のテレビCMには、人間の「思考のクセ」を逆手に取った仕掛けが、とことん詰め込まれている。今回は、博報堂コンサルティング執行役員で、心脳マーケテイングを専門としている楠本和矢氏が「優れたCMが利用している、人間の“思考のクセ”」について、行動経済学の視点から解説する。

15秒のテレビCMは
ビジネスに効く仕掛けの宝庫だ

 まず、皆さんにお伝えしたいのは、テレビCMと行動経済学は、非常に相性がいいということです。人間には「限られた情報で、判断を促す」という思考モードがあり、行動経済学では、そのことを「ヒューリスティクス」と呼んでいます。

 ノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマン教授の名著『ファスト&スロー』によると、人間には、以下二つの思考モードがあるのです。

「システム1」: 直感的で速く、考えるのにほぼ努力を不要とするモード
「システム2」:注意力を必要とする、論理的で遅いモード

 CMで最もポピュラーな秒数は「15秒」です。15秒という短時間で、視聴者の購買につながるポジティブな連想を届けなければいけません。速さが重視されるのです。そのため、優れたCMほど「システム1」を意識し、積極的に活用している傾向が強いです。

 次ページでは、どんな人でも陥ってしまう「4つの思考のクセ」と、それらを利用した優れたCMの例を紹介します。「あ!このCMもか!」と思い当たるものもあるかもしれません。ぜひ、皆さんのお仕事にも役立ててください。