「プットオプションの売り」には
恐ろしい罠が潜んでいる

 プットオプション(売る権利)を買うというのは「株価下落に備えて保険を買っておく」ことだ。では仕組み債で使われている「プットオプションの売り」とは、どういうことだろう。

「売る権利を売る」ということになるので、これだけでは何が何だかわからないように思える。これは簡単に言えば「保険を引き受ける」という行為なのである。

 プットオプションの買い手は、売り手に対してオプション料という保険料を支払う。その代わりに、株価が下落した場合、プットオプションを買った相手は売り手に対してあらかじめ決められた価格、これを行使価格というが、その値段で「買い取り」を要求できる。つまり下落する前の価格で買い取るように請求できるということだ。

 もし、買い手が買い取りを要求してくれば、売り手はそれに応じなければならない。しかも期間内であれば、要求のタイミングは自由だ。つまり、その買い取り要求の権利をいつ要求してくるのかは相手次第ということになる。もし仮に株価が下がらなければ、オプション料はまるまる利益になる。

 でもこれは考えてみれば恐ろしいことだ。プットオプションの売り手、すなわち保険の引き受け手が得られる利益は、オプション料だけに限定される。だが、代わりに下がった場合の損失はどこまで損になるかはわからないからだ。

 こういうオプション取引というのは主にプロの機関投資家同士でおこなわれるものだ。彼らは資産運用が業務なので、多くの株式を保有している。株価が下がることに備えるためにはプットオプションを買って一定の保険をかけておくことも必要だし、売る側からすれば、安定した保険料が受け取れるのであれば保険を引き受けてもよいという判断もありうる。多くの場合、機関投資家はオプションの売りと買いのポジションを複雑に持ちながらリスク管理をするものだからである。