「集中豪雨」の季節到来、危険地域の住民に転居・建て替えを促す方法とは写真はイメージです Photo:PIXTA

災害に弱い危険な所に住んでいる人は少なくない。もちろん、その人たちがそこに住んでいるのには理由があるのだろうが、行政側には、転居や建て替えを促すインセンティブを検討するなどの対策も求められる。では、どのような施策が有効なのだろうか。(経済評論家 塚崎公義)

あえて危険な所に住む理由
コストが低くなることも?

 今年の夏も集中豪雨の被害が発生している。そこで、災害について考えてみた。地盤の緩い所に住んでいる人は、地震や土砂崩れなどが発生すると悲惨なことになりかねない。しかし、それでも危険な場所に住んでいる人は多い。それには、理由があるからだ。

 昔から住んでいる人は、住み慣れた所を離れたくないだろうし、建て替えるにはコストがかかる。新しく住む人は「危険な場所だから安く買えた」という事情もあるだろう。「将来発生するかもしれない災害」と「安全性を高めるために確実に生じるコスト」を比較すると、「災害が起きないほうに賭ける」というのが人情かもしれない。

 危険な所を安く購入して、後から政府が安全対策を講じてくれることを期待する人もいるだろうし、「災害が発生して家が壊れたら、政府が復興予算で建て直してくれるだろう」と期待する人がいても不思議ではない。

 政府は、国民を危険から守るために税金を使ったり、災害に遭った国民を救済するために税金を使ったりすることをいとうべきではない、と考えるのは自然だ。しかし、他の納税者との公平性を考えると、リスクの分だけ安く不動産を入手した人に対しては、その差額を用いて安全策を講じたり、保険に加入したりすることを勧めるという判断も妥当だ。事案にもよるだろうが、難しい判断を求められる場合もあり得る。

 地盤の緩い土地以外にも危険な場所は多い。例えば木造の密集した所(木密地域)では、ひとたび火災が発生すると悲惨なことになりかねない。建て替えが望ましいのだろうが、木密地域の場合には「近隣住民が建て替えてくれれば自分はコストなしで安全になれる」という「譲り合い」が起きている可能性もある。

 建て替えのコストが10で、メリットは建て替えた人が8、隣家が4だとしよう。