ユースバルジ問題とは何か?
さらに頻発するテロ行為については、ユースバルジ(youth bulge・若年層の膨らみ)問題を視野に入れるべきでしょう。
政情が不安定で経済が低迷している中東では、人口の多い10代から20代の元気な若者が働きたくても働く場所がありません。
イラクもシリアも国が壊されているのです。
若者がたくさんいる、けれども働く場所がない。
一方でこれらの若者も恋をしたい、デートをして充実した青春をすごしたいと思っている。
でも働けないからお金がないし、娯楽の機会も少ない。
そこでこれらの国の若者は、絶望してテロに走ってしまうのです。
このようなユースバルジが、中東のテロ問題の基底部分を形成していると考えられます。
もちろんイスラーム教の置かれている現状と、無関係ではないかもしれませんが、テロとイスラーム教を表裏一体の問題として考えるのは、極端すぎると思います。
むしろ、ユースバルジのほうがはるかにテロとの親和性は高いと思います。
なお、ユースバルジについては、グナル・ハインゾーン『自爆する若者たち──人口学が警告する驚愕の未来』(猪股和夫訳、新潮選書)という優れた本があります。
『哲学と宗教全史』では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を、出没年付きカラー人物相関図・系図で紹介しました。
僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。
(本原稿は、13万部突破のロングセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)