壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。
現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題なのだ。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。本書には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。

【漫画家・弘兼憲史が教える】<br />「親子関係は明確な線引きをするべき」と断言するワケ作:弘兼憲史 「その日まで、いつもニコニコ、従わず」

80代の親に50代の子がパラサイト

子どもが親のお金に依存する状況は、すでに社会的な問題となっています。一つは「パラサイト破産」と呼ばれるものです。高齢者が子どもに経済的な援助を続けた結果、資産を使い果たしてしまい、破産に追い込まれてしまうという問題です。

そしてもう一つ、「8050問題」というものもあります。8050とは、「80代の親の年金をあてにしている、引きこもりの50代の子ども」という意味です。

親が80代の高齢ともなれば、子どもはおおよそ50代の年齢に達します。50代の子どもたちが仕事もせず、親の年金をあてにして生活する状況がみられるようになっているのです。

家庭によってさまざまな「8050問題」

親が公務員で安定した年金給付を得ているような場合、持ち家に住んでいれば、パラサイト破産しないまでも、なんとか親子で生活していくことができます。そうやって子どもが親の年金をあてにしていると、いよいよ親が亡くなったときに子どもの生活や自宅を維持できるのか、という問題が生じます。

極端な事例でいうと、親が亡くなっても遺体を自宅に放置し、親の年金を受給し続けたという死体遺棄・年金詐取の犯罪がニュースになることもあります。

子どもが仕事をしていない事情は、家庭によってさまざまです。引きこもりのまま中高年になってしまったケースもあれば、不景気でリストラに遭ったとか、親の介護のために離職したケースもあります。

親子は対等な関係であるべき

すべてのケースで子どもが親に甘えていると決めつけるつもりはありません。また、親が経済的に裕福で、子どもたちにお金を出しても痛くもかゆくもないのなら、あえて咎めるつもりもありません。

でも、いい年をした子どもが、いつまでも親に経済的に依存する姿を見ると、果たして本当にいいことなのかと考えてしまいます。子どもが社会人になったら、親としての義務は終わり。あとは対等な関係でつき合うべきです。

就職したら一人暮らしをさせる

僕の意見としては、子どもが親と同居し続けるのは好ましくないと考えています。少なくとも、大学を卒業したら、子どもには一人暮らしをさせたほうがいいです。

会社が実家から近いとか、家に部屋が余っているとか、子どもの給料が低いからといった理由にはあえて目をつぶり、自力で生活させるのです。

そういうとちょっと冷たい感じに聞こえるかもしれないですが、子どもに愛情がないのではありません。むしろ、我が子を想ってのことです。

親子の関係に線引きする覚悟

人生にはいろいろな困難や理不尽な出来事が待っています。壁に突き当たったときには、周りの人に相談したり助けてもらったりするにせよ、最終的には自分の力で乗り越えていかなければなりません。

しかも、順番からいえば親が先に死ぬわけですから、いつまでも子どもは親に頼るわけにはいきません。だからこそ、親が気力・体力とも元気なうちに、子どもに自立を促す必要があるのです。

親が何かと甘やかせば、子どもは親に依存する一方です。場合によっては、親が自宅を引き払って、中古マンションやアパートに夫婦だけで暮らすといった覚悟も求められます。線を引くべきところできっぱりと線を引くのが、長い目で見れば、我が子のためになると思うのです。

※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。ぜひチェックしてみてください。