壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。
現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題なのだ。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。本書には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。

【漫画家・弘兼憲史が教える】どんなにお金があっても老後不安は絶対になくならない“なら、どうする?”への2つの答え作:弘兼憲史 「その日まで、いつもニコニコ、従わず」

老後のお金の不安

【前回】からの続き

「そうはいっても、やっぱりお金に不安がある」という人の気持ちは、もちろんわかります。

少し前に「老後2000万円問題」が大きな話題となりました。発端となったのは、金融庁の金融審議会がまとめた報告書です。報告書では、夫65歳、妻60歳で、ともに無職の夫婦が30年後(夫95歳、妻90歳)まで元気に長生きすると仮定すると、およそ2000万円のお金が足りない(つまり蓄えておく必要がある)と試算しています。

具体的には、平均的な収入が月21万円で、支出が26万4000円くらい。毎月5万4000円程度の赤字が30年続くと、その30年で2000万円足りなくなるという計算です。

老後資金を考えたらキリがない

収入の柱をなす「年金」は、国民年金のみ加入していた自営業の人と、厚生年金に加入していた会社員、さらに企業年金の制度が整っている大企業に勤務していた人、年金型の生命保険に加入していた人では、受給額が異なります

また、すでに70代を迎えている団塊の世代に必要なお金は、単純に考えて2000万円より少ない数字になるでしょうが、いずれにしても「お金が足りない」といわれると不安になるのが人情です。

「老後資金はいくらあっても足りない」という考えにも一理あります。「がん、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中など、大きな病気をいつ患うとも限らないし、高額な治療費がかかったら、あっという間に老後資金が不足する」「この調子で年金制度が維持できるなんて保証はないから、信用できない」。そんなふうに考え始めたら、キリがありません。

縮小を楽しもう

僕が断言できるのは、どんなにお金があっても老後不安は絶対になくならないということ。だからといって、「貯蓄なんて全然いらない。なるようになる」などと無責任にいうつもりもありません。

強調したいのは、「いつまでも若いときと同じレベルの生活を維持しようとするのはやめよう」「お金に振り回されない生活をしよう」ということです。

いい換えれば、生活をダウンサイジング(縮小)していくという視点が重要です。そういうと、なんだか寂しい響きがありますが、むしろ「縮小を楽しもう」というのが僕の提案です。

不安でビクビク生きるのはやめて、身の丈にあった消費をしながら豊かな生活を実現していくことを考える。そこに楽しみを見つけていく発想が求められるのです。

※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。ぜひチェックしてみてください。