雇用から「個要」へ
地域金融機関の経営環境は容易でない状況にある。持続可能なビジネスモデルをどう実現していくかが本質的なテーマであり、それぞれの個性や独自性に基づく差別化が問われている。
その源泉となるのが、いま注目を集めている「人的資本」だ。これまで金融機関の人事では管理や組織統制に重きが置かれてきたが、社員の育成や成長支援に切り替え、「雇用」することから、「個要」(個々の価値ある)人材を輩出していくことへとかじを切ることが、構造不況業種の負のサイクルから脱するカギとなる。
本連載では、経営において人的資本の重要性が高まる中で、金融機関に求められる独自の人材戦略と、同時に問われている持続可能なビジネスモデルについて、注目される地域金融機関等の中期経営計画を中心に簡潔に分析・整理し、人的資本の時代のマネジメント進化論を考えていきたい。
次回から個別の金融機関を取り上げていくが、その前に、経済産業省が今年5月に公表した、経営戦略と人材戦略の連動の重要性を提起している「人的資本経営の実現に向けた検討会」報告書(人材版伊藤レポート2.0)のポイントを共有したい。