「治安格差」で住まい探し、犯罪発生率の高低だけで選んではダメな理由写真はイメージです Photo:PIXTA

都区部の犯罪件数は、年間8.5万件を超えており、1日平均で約230件の犯罪が発生している。そのエリア差はかなりあり、刑法犯罪率が低い地域では、住民の自衛意識は高いものと思われるが、粗暴犯などはそこに住んでいるとは限らず、人がいる所に犯罪をしにやって来るのだ。果たして、どういう場所で、多くの犯罪が発生しているのか。(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)

犯罪が起きやすい
地域の3つの条件

 犯罪多発地域を「ホットスポット」という。犯罪発生の原因は犯人の所在地ではなく、犯罪が起きやすい環境にある。ホットスポットとなる条件として、次の3つが挙げられる。

(1)犯罪の標的が多い場所(つまり、集客施設がある繁華街)
(2)警備が手薄な場所(警備状況が厳しい大規模施設ではなく、雑多な集積地で警備が手薄な場所)
(3)夜間は暗がりになるような場所(一般に深夜は犯罪発生率が上がる)

 だからこそ、地域として警備コストを払い、夜でも明るさを保つことが要求されるのだ。

 犯罪の内訳は、万引24%、自転車盗15%、詐欺9%、暴行7%、傷害3%の順になる。繁華街のように人が集まる所で多い犯罪は、暴行・傷害・脅迫などの粗暴犯や詐欺・万引などになる。一方、人が住んでいる所で起こりやすい犯罪は、侵入窃盗、空き巣、自転車・オートバイの盗難などになる。前者は昼間の人口と、後者は夜間の人口と相関するので、前者はオフィスや商業施設が集積するエリア、後者は住宅地が相当する。

 結果として、犯罪が多い区ワースト5は、若者が集まる繁華街の代表格となる渋谷区、同様に池袋駅を抱える豊島区、上野駅などのある台東区、新宿駅のある新宿区、錦糸町のある墨田区となる。逆に少ない区は、1位文京区、2位品川区、3位中央区、4位港区、5位目黒区、以降、杉並区・練馬区・世田谷区と外周の落ち着いた住宅街が続く。この中でも1位の文京区は断トツで、最も犯罪が起こりにくい街になる。