コロナ禍でウェブ会議が幅広く普及した。そうした中、相手の感情を読み取るためにウェブ会議では「顔出し」での参加が好ましいと考えている人は多い。しかし、顔出しは感情を理解するのに本当に有効なのだろうか。これに関して、興味深い研究結果がある。(キャスター取締役 石倉秀明)
ウェブ会議で「顔出し」は必要?
感情を読み取るために本当に有効なのか
ビジネスパーソン、特にホワイトカラーと呼ばれる職種の人にとって、ウェブ会議はすっかり定着した。リモートワーク時はもちろん、オフィスに出社していても取引先との打ち合わせや面接をウェブで行うようになった人は少なくないだろう。
筆者も2019年以前は「ウェブ会議でお願いします」と伝えても、「来てくれないんですか?」と言われることが少なくなかったが、近頃は何も言わなくてもウェブ会議で行うことが前提となっている場合がほとんどである。
ウェブ会議の増加により、ウェブ会議ならではの新たなマナーも生まれている。その中でも「顔出し」については、必須、もしくは必須とまではいかなくても推奨している企業の方が多いだろう。
ウェブ会議で「顔出し」してもらうことで、少しでも相手の表情から情報を得ようと思っているビジネスパーソンも多いはずだ。また、ウェブ会議に限らず「直接顔を見て話すことで真意や感情が伝わる」といった意見も根強い。たしかに、直感的には、顔を見て話すことはコミュニケーションにおいて重要に思える。
一方、実は筆者が取締役を務める株式会社キャスターでは、2014年の創業から全員がフルリモートワーク(出社や対面をしないリモートワーク)で事業運営しているが、社内のウェブ会議において顔出しは必須としていない。むしろ、画面オフを推奨しているほどである。
画面オフにすることで化粧しなくていい、背景で家の中が見えなくていいなどの理由もあるが、セキュリティーに気を付けていればどこからでも働けるリモートワークのメリットを最大限に生かすことが目的で画面オフを推奨している。
ただ、社会的には“顔出し必須派”も多く、フルリモートワークで運営している会社でも意見が分かれるところだ。その最大の理由は、やはり「顔を見ることで相手の感情や真意が伝わる」こと、つまり顔出しがコミュニケーションやその背景にある感情の交換に役立つからというものであろう。
しかしながら、果たして本当に「顔出し」は相手の感情を理解するのに有効なのだろうか。