こうなると憂慮されるのは日米の政策金利差の拡大に起因する一層の円安の進行だが、直近ではアメリカの実質金利が物価高騰によって下がっており、また4~6月期のGDPが-0.9%と2四半期連続のマイナス成長だったこともあって、為替相場の先行きは徐々に落ち着きを取り戻す可能性が出てきている。したがって、今回は日銀の金融緩和政策の経緯および今後と、住宅ローン金利の推移について論考を進める。

金融緩和策を加速させた
日銀の手法とは

 2013年4月に始まった日銀の金融緩和政策(当時は衝撃的な政策であったため“黒田バズーカ”とも言われた)によって、一時的に消費者物価指数(CPI)は上昇したものの、目標に掲げた2%の物価上昇には届かず、また消費税が2014年4月から8%に引き上げられたため、CPIはその後下落の一途をたどった。

 その後、現状では考えられないことだが、2015年には原油価格が下落し、生産国である中東各国の経済に対する不安視、およびBRICsと言われる新興国の経済にも陰りが見え始めたことから、世界経済の減速が懸念される状態となり、日銀は2016年から新たにマイナス金利付き量的・質的金融緩和という思い切った金利政策に踏み切った。

 これは、従来の量的・質的金融緩和に加えて、金融機関が持つ日銀当座預金について、一定残高以上の部分にマイナス金利、即ち預け入れていると結果的に元本が減ってしまう措置を導入したもので、金利をマイナスにするというドラスチックな手法によって、眠らせている資金を市中で半強制的に流通させようと企図することにより、日銀は金融緩和をさらに加速・拡大させていくことを目指した。

 同年9月には長短金利操作付き量的・質的金融緩和を導入し、現在に至るまで継続する長短金利操作=イールドカーブ・コントロールによって将来の安定した金利水準の持続性を醸成し、物価上昇率2%を安定的に超えるまで資金供給量を拡大し続けるという、財政ファイナンスとも受け取られかねない措置に踏み切った。

 これまでは短期金利、すなわち新発国債1年物~3年物にアプローチして積極的に買い入れ、その金利水準を新発10年物以降の(長期および超長期)金利にも波及させるという慎重な姿勢を維持していたが、長期国債も積極的に買い入れて、各々の金利(イールド)を意図的にコントロールすることでより直接的な介入を可能にした。

 もちろん日銀の意図した通り、イールドカーブ・コントロールによって短期国債と長期国債の金利をそれぞれバランスの取れたカーブに維持できれば、金融機関の収益悪化を回避しつつ、金融緩和政策を継続することができることになる。