住宅ローン金利は政策金利と連動
特に固定金利の動向は要注意

 このような長期金利の上昇傾向を受けて、金融機関が提供する住宅ローン金利にも影響が出始めている。良く知られるように、住宅ローンの固定金利は長期金利と連動しており、変動金利は短期金利と連動しているから、先述のような新発10年物国債の金利が0.25%を超えるような水準に達すれば、固定金利も上昇基調で推移することになる。

 実際に、2021年末には0.045%で推移していた長期金利は、年明け早々に0.1%台に上昇し、翌2月には0.2%台と急速に上昇している。その後は0.2%前半で推移して6月以降の0.25%超えに達しているが、この間1.3%前後で推移していた住宅ローン35年固定金利は1.5%台に上昇、同様に5年固定金利は0.8%前後から1.0%前後へ、10年固定金利も0.8%超の水準から1.1%前後へと、おのおの上昇している。

 円安だけではなく、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した世界的な資材・エネルギー不足による世界経済の不安定化も国債の引き受け手を少なくさせる要因となって、長期金利および住宅ローン固定金利の上昇を招いたと言える。

 この短期間での長期金利の急激な上昇は、足元ではアメリカの実質金利が低下傾向にあることから落ち着きを取り戻しつつあるが、依然として世界的な経済情勢の変化によって、日銀のイールドカーブ・コントロールが直ちに効かなくなる状況が起き得ることを示している。したがって、住宅ローンをこれから申請する予定のある住宅購入者は、世界情勢を頭の片隅に入れつつ住宅ローン商品を選択する姿勢が求められるだろう。

 一方、住宅ローンの変動金利は、短期金利と連動しているため、長期金利が上昇基調で推移しても一向に変化する様子はなく、過去5年程度俯瞰(ふかん)しても住宅ローン変動金利は0.4~0.5%の水準で極めて安定的に推移している。

 端的に言えば、長期金利が少なくとも2%前後の水準に達しなければ短期金利の上昇は見込めない状況だから、日銀の金融緩和策が継続する限り、変動金利の上昇はないとほぼ断言できる状況にある。

 つまり、住宅ローンの固定金利は比較的変動しやすく、変動金利は変動しにくいという逆説的な表現が当てはまる。固定金利は借り入れた時から金利が変わらないということであり、借り入れる以前のボラティリティーは相応に大きく、変動金利のボラティリティーは極めて小さいと認識すべきだ。

日銀・黒田総裁の任期は来年4月まで
総裁の交代が金融政策に与える影響は

 これまで日銀の金融政策の経緯と金利の推移および世界情勢の変化が与える影響について見てきたが、では日銀の金融緩和策が今後変化すること、またはそのタイミングは来るのだろうか。

 ひとつの契機と考えられるのは、日銀の黒田現総裁の任期だ。現状ではリフレ派と言われる金融緩和に積極的な黒田総裁の下で金融政策決定会合が運営されているが、黒田総裁の任期は2023年4月8日までとなっており、総裁が交代すると(もちろん人選にもよるが)金融政策も転換する可能性はあると考えて良い。