「デザイン思考」を実践する、21人のロールモデル──『おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる 地域×デザインの実践』鬼太鼓/PIXTA

デザインは、見た目やカタチを整えること──。そんな「狭義のデザイン」を軽々と飛び越えて、ビジネスモデルをデザインしたり、コミュニティーをデザインしたり……。地域に潜むリソースをフル活用しながら「地域のデザイン」に取り組むデザイナーたちがいます。今回は、地方で活躍するデザイナーたちのオリジナルな活動事例が集められた本を通じて、「デザイン思考」の実践とは何かを考えます。

書店の棚から考える、デザインと経営の距離

「デザイン」と「経営」の関係を近づけるために、ヒントになる本はないかな?

 そう考えながら書店の棚を眺める日々が続いています。

 経済産業省と特許庁が「『デザイン経営』宣言」を発表したのは2018年のこと。国が「デザイン経営を強く推進していこう」という姿勢を示したことをきっかけに、「デザイン経営」「デザイン思考」という言葉がタイトルに入った本をよく見掛けるようになりました。

 書籍の販売データを確認すると、「デザイン経営」がタイトルに付いた本はビジネス書と一緒に、「デザイン思考」がタイトルに入った本は、自己啓発書と一緒に購入されていることが多いようです。デザインに対するビジネスパーソンの関心も、着実に高まっているのですね。

 中でも、このカテゴリーの人気の著者といえば、ご自身が戦略デザイナーであり、経営者でもある佐宗邦威さん。『世界のトップデザインスクールが教える デザイン思考の授業』(日本経済新聞出版)や『直感と論理をつなぐ思考法』(ダイヤモンド社)などの著作を「読んだ!」と言う方も多いのではないでしょうか。

 タイトルに「経営」とか「ビジネス」といった言葉が入っていなくても、デザイナーがみずから、自分が関わったプロジェクトについてビジネス目線で語っている本もたくさんあります。しかし、それらの多くは「デザイナーが書いた」というだけで、「美術・デザイン」のコーナーに並ぶことがほとんど。「デザイン経営」のコーナーを常設している書店はまだ少数派なのです。そうなると、佐宗さんの本ほどのベストセラーにならない限り、ビジネスパーソンへのリーチが難しい……。ビジネスとデザインの距離を縮めるには、書店での販売場所が見直される必要があるかもしれません。