日本がアルゼンチンタンゴを踊る日、新興国に転落するときに起きることPhoto:PIXTA

先進国は自国の国債を安全資産として供給できる。それゆえ、危機の際に中央銀行によるファイナンスで拡張財政を実施できる。長期停滞にあえぐ日本が新興国へと転落していくとき、財政健全化が進んでいないと何が起きるのか。(BNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミスト 河野龍太郎)

円は国際通貨の一角を
維持できるのか

 近頃、話題になるのが、日本の経済規模が世界第3位から転落し、ドイツに劣後するのではないか、という話だ。もちろん、急激な円安が原因であり、短期的な為替変動がもたらすドル換算の経済規模に一喜一憂すべきではないだろう。

 経済厚生上、重要なのは1人当たりの購買力ベースのGDPだ。過去30年間、1人当たりGDP(国内総生産)がほとんど改善していないこともあり、日本の実質賃金は、最近の円安が進む前から、先進国の下位グループに位置している。

 ただ、ドル換算のGDP規模も無視できない理由がある。まず、国際政治におけるリーダシップや発言権に影響し、喫緊の課題である安全保障にも決定的に重要である。相対的な国力という観点からは、円が国際通貨の一角を維持できるのか、という問題にも関わる。

 次ページからは、国際通貨保有国からの転落リスクとそれがもたらす公的債務の持続可能性について論じる。