別解は「3つのやり方」の組み合わせで生まれる

岡本彰彦(以下、岡本) ありがとうございます。平尾さん、いろいろと突っ込みながらやっていただけますか。

平尾丈(以下、平尾) 佐藤さんの組織の作り方を聞いて皆さん、驚きませんか? 人と会わずして、ソーシャルネットワークで人を採用して、副業や業務委託の方も入れながら。私なんかは東京メインで正社員中心の上場企業という非常に中央集権的な組織の中で、事業ドメインを広げるということで分散してきたつもりなんですけれど、その枠を超えて、分散されている。

オーナーシップのやり方から、経営の仕方から、結構自由度がある中で、さまざまな観点を考えられたうえで佐藤さん、今、こういうポジションをとられている。イーロン・マスクに近いかもしれないと思います。どうやって別解を作っているんですか。

佐藤 「優れたやり方」がよくわかってないんですね。つまり正解がよくわかってなくて、単純に直感的にこれだろうなって選んでやっているので、さっき平尾さんのこの図を見て、すごい腹落ちしました。

自分がやってきたことをロジックに落として言語化するっていうのは、こういうことなんだなと思って。逆に言うと平尾さんは、「優れたやり方」を理解したうえで、違う方針を取ってるんだなと思っていて。私、会社に勤めたことがないので、「優れたやり方」がわからないんですよね。意外に「自分らしいやり方」から起点に考えているだけでして、それが世の中的に言うと「別のやり方」になっている。それがうまくいった場合に「優れたやり方」に後天的になってるんだなと私は、今、気づきましたね。

岡本 実は僕もその観点で質問があって、ここに居合わせる皆さんって、「自分らしいやり方」と「別のやり方」の天才みたいな人たちだと思うんですね。自分らしいやり方で、別のやり方を突き詰めて、交点のところでがんがん試行錯誤をして、結果うまくいったものがあとになって、経営学者の人たちが後づけで理論化していって、「優秀なやり方」になるみたいなイメージがすごいあるんですよ。それで言うと、この3つのやり方のバランスを時間軸も含めて説明をお願いしたいなと思っていまして。

平尾 ありがとうございます。私は、「自分らしいやり方」と「別のやり方」が近いんですね。ほかの人と同じのは嫌だっていうのが「自分らしさ」としてあるので、「優秀なやり方」を考えたうえでずらすという方法論です。

起業家って「自分らしいやり方」でがんがんやっていく方と、「別のやり方」がお好きな方とそれぞれが突き抜けて世の中を変えているのは、おっしゃるとおりだと思います。時間軸までは追いきれていませんが、たくさんの起業家とお話しして、「自分らしさ」「優れている」「別のやり方」それぞれの要素から出発して、皆さん最後には、この図の真ん中に収束して、別解が成り立っているように思います。起業家ではなく、誰かに仕事を任されて働いている方というのはいかに「優秀なやり方」をやるのか、オペレーションを頑張るのかにこだわっています。

一方でイノベーションをやれと言われているけれど、どうやってやればいいのかわからない。その中で、このステップで考えていったら、できるんじゃないかなと作っていったやり方なんですね。

「優秀なやり方」だけに陥ってしまうと「君じゃなくてもできるよね」となってしまう。もしくは、AIとかに取って代わられちゃうところを、「別のやり方」とか「自分らしいやり方」から考えていくっていうことができたら、もっと多様性で世の中がよくなるんじゃないかなと思っています。

佐藤航陽(さとう・かつあき)

株式会社スペースデータ 代表取締役社長CEO

1986年、福島県生まれ。早稲田大学法学部在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。累計100億円以上の資金調達を実施し、年商200億円規模まで成長させる。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。衛星データから地球全体のデジタルツインを自動生成するAIを開発。現在も「テクノロジーで新しい宇宙を創り出す」ことを目的に研究開発を続けている。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30Under 30 Asia)や「日本を救う起業家ベスト10」に選出される。著書『お金2.0』が20万部を超えるベストセラーとなり、2018年のビジネス書で売上日本一を記録した。2022年3月31日に最新刊となる『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』を出版。