過去の成功例が通用せず、優れた手法はすぐに真似される「正解がない時代」。真面目で優秀な人ほど正攻法から抜け出せず、悩みを抱えてしまいます。リクルートに入社し、25歳で社長、30歳で東証マザーズ上場、35歳で東証一部へ。創業以来12期連続で増収増益を達成した気鋭の起業家、株式会社じげん代表取締役社長執行役員CEO・平尾丈氏は、「起業家の思考法を身につけることで、正解がない時代に誰もが圧倒的成果を出すことができる」と語ります。「自分らしく」「優秀で」「別の」やり方を組み合わせた「別解」を生み出すことで、他人の「優等生案」を抜き去り、突き抜けた結果を実現することができるのです。本連載では、2021年11月にIVS那須で開催された「起業家の別解力」をテーマとしたディスカッションの内容をお伝えします。

世の中を変えていく「すごい起業家の共通点」とは

すごい起業家の5つの力

平尾丈:私は、18歳のときから20年以上、起業家を追いかけています。そのなかで、起業家の人たちは、リスペクトも含めて「変わっている人」が多い。これはなぜだろう。もしくは、「すごい起業家とは何か」を常に考えてきました。

その結果として、私は優れた起業家は、「発見力」「別解力」「実現力」「失敗力」「成長力」この五つの力がある人だと思っています。

「発見力」というのは、問題や課題を発見する力。何かが「問題だとわかる」ためには発見する力がないと厳しいです。「問題発見」は今非常に注目されています。

しかし、私が注目してるのは、起業家によって問題の「解き方」が結構違うという点です。何かを解く過程においてもオリジナリティを出して、「別解」を生み出す。これを「別解力」と名付けました。この別解力で世の中を変えている方が多いと思っています。

また、別解を作ったあとに、それをちゃんと実現する。成功するまで夢中になってやり続ける。これを実現力といっています。

問題を発見する力。別解を作る力。別解を実現させて、世の中を変える力。

この三つが起業家の方は優れていると思います。

そして、この三つの力を支えるのが、失敗してもくじけない「失敗力」と、普段から努力を重ねていく「成長力」です。この五つの力があると、起業家は成功すると私は思っているのです。

すごく平易な言葉の中で「別解力」だけ違和感あるかもしれませんが、キーワードとしてぜひ活用していただきたいなと思います。

「仕事の仕方」にも多様性が必要

なぜ別解が必要なのか。優秀な起業家や経営者が増えるほど、優れた打ち手が多くなります。しかし、優れたやり方はみな同じになってしまうので、すぐ陳腐化してしまったり、他社に追いつかれてしまいます。結果、レッドオーシャンになってしまうのです。

組織論ではダイバーシティ&インクルージョンはかなり進んできていると思います。一方、仕事の仕方は、みんな同じやり方になっていないでしょうか。仕事の仕方自体にもダイバーシティがあっていいのではないか。

自分なりの答えを見いだしていく力が別解力です。

正解がないと言われる世界の中で、別解を立てること、自分の頭で考えて、解決に向かうことによって、世の中と対話しながら世界を変えていくことができるんじゃないか。ここに、別解の必要性を感じています。

そして、起業家はこの別解を作る力が優れている。それにより世の中を変えていく人たちがいるのかなと思っています。

じげんの別解

例えばじげんという会社自体も、2006年当時はソーシャルゲームのバブルが始まったタイミングだったのですが、その流れに乗らなかったのは一つの別解です。上場した先輩方から四半期決算で増収増益しながら新規事業を仕込んでいくなど、「土地を耕しながら建物を建てていく」のがとても大変だと聞いていました。だから、土地を最初から耕しておかなきゃいけないなと思っていて、「選択と集中」の逆、「選択と分散」のようなことをやりながら、ある程度領域を広げてから上場をしていくということをやってきました。

また、上場するまでじげんにCXOは私以外誰もいませんでした。一番経営のボラティリティが高いのは人だと思っていたので、Chief Everything Officerで長らくやっていました。起業当初は経営が不安定なので、そのやり方が最初の安定性を生んだと思っています。

あとは、リクルートから独立するにあたっても、彼らと競争しないドメインにずらしました。プラットフォームonプラットフォームには徹底的にこだわってやってきたのがよかったのかなというふうに思っています。

上場後も、調達したお金を何に使うべきか考えた結果、M&Aにたどりつきました。

打率3割から1割と言われるM&Aでも、19件(※2021年11月時点)実施して、勝率が7割から9割。ここも別解としてかけ算をしてやっています。

「別のやり方」だけでは「逆は真ではない」と言われるように、大体不正解なんですよね。だから、要素を組み合わせる必要があります。私は、優れた打ち手と別の打ち手をかけ算することによって、じげんという会社を経営しています。