新人医師でもベテラン医師のように
喉の奥を見る視診レベルが上がる
そうした厳しい事態への備えとして、医療現場には、新たな助っ人が登場している。
医療系ベンチャーのアイリス(東京都千代田区)が開発した、喉を診る専用の「視診器」に、喉から病気を見つける“診断支援AI”を組み合わせた感染症診断支援機器『nodoca(ノドカ)』だ。問診情報と咽頭画像から感染症の診断を支援する医療機器であり、去る4月、日本で初めて「新医療機器」として承認を取得したAI搭載医療機器となった。
nodocaは咽頭専用のカメラとAIを組み合わせた「視診器」だ。内科の診察ではインフルエンザに限らず、問診、聴診とともに喉の奥を見る視診(咽頭観察)が行われる。喉から得られる情報は、診断にとってマストだ。ただ、しっかりと視診するのは案外難しい。「舌圧子(ぜつあつし)」で舌を押さえつけられると、大概の人は咽頭反射を起こし「オエッ」となってしまうからだ。それでも医師たちは「喉を診ますね、はいアーン」「オエッ」の超短時間で喉の観察を終えるわけだが、そこはやはり知識と経験に裏打ちされた職人技があり、ベテランと新人の診察力には大きな格差がある。
そんな診察力の格差を、AI搭載の視診器で補ってベテランの視診を再現し、誰でも正確かつ見逃しのない咽頭観察ができるよう支援する目的で開発されたのがnodocaだ。第1弾はインフルエンザの診断支援AIからのスタートだが、ゆくゆくは第2弾、第3弾と、喉に異変が生じる他の疾患にも支援領域を広げていく予定だという。