掬川正純ライオン代表取締役社長日用品大手ライオンの掬川正純社長は「一律値上げ」に消極的なスタンスを取る Photo by Kazutoshi Sumitomo, ライオンHP

原材料高で値上げを決断する企業が相次ぐ中、日用品大手のライオンは国内で「一律値上げ」に消極的なスタンスを取る。一体なぜなのか。掬川正純社長が原材料高への「対処法」とともに、小売りや卸への向き合い方を明かした。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

原材料価格のマイナス影響を
年130億円予想に見直し

――長引くコロナ禍やウクライナ侵攻などを契機に、円安や原材料高が進んでいます。

 ウクライナ侵攻による事業への影響は軽微ですが、原材料の購入はドル建てがかなりの部分を占め、インパクトは大きい。円安は全社的に見ればマイナスです。

 原材料価格も、(為替や原油価格などを加味して)ワースト、ミドルワースト、ミドルの三つのシナリオを作っていますが、現在はワーストシナリオに近い状況です。原材料価格のマイナス影響は、年初想定では60億円でしたが、2022年12月期中間決算で130億円に見直しました。

――企業の値上げが相次いでいます。競合の花王は、ベビー用紙おむつを値上げしました。一方、ライオンは一律値上げに消極的なスタンスです。なぜですか。

 既にタイやマレーシア、韓国などの国では、洗剤を中心に値上げしました。日本でも、ペット用品の一部で値上げを実施しているところです。

 ただし、国内の(日用品の)事業環境は大変厳しい。ライオンが「出荷価格を引き上げます」と言い放っても、われわれの思い通りになるとは思っていないです。

――どういうことですか。