花王日用品業界では異例となる値上げに踏み切る花王。手始めにベビー用紙おむつを値上げする Photo:JIJI

花王が日用品業界では異例となる「値上げ宣言」を表明し、手始めにベビー用の紙おむつの値上げに踏み切った。スーパーやドラッグストアなどの小売りが値上げに抵抗を示す中、花王が小売りを「納得させる秘策」は何か。販売部門を統括する竹内俊昭専務を直撃した。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

花王がベビー用紙おむつを値上げ
競合メーカーも「状況は同じ」

――花王が値上げする方針を示し、競合メーカーや消費者が注目しています。

 今回の値上げは「戦略的値上げ」と題して、(価格は変えない)内容量の減量、出荷価格の値上げ、販促費の効率化、販促のデジタル化、主にこの4つを行います。

――4つの戦略的値上げの評価指標は何になりますか。

(2022年12月期の原材料価格高騰による損益への影響)110億円のうち7割に当たる約80億円を吸収すること。こうした前提で予算策定もしています。

――4つの施策のうち、純粋な値上げとして、ベビー用の紙おむつ「メリーズ」の主力商品で出荷価格を約10%引き上げます。

 経験したことのない原材料価格高騰などに加え、競争の激化で紙おむつの価格自体下がっていることが要因です。

――花王がベビー用紙おむつを値上げする中で、同カテゴリーで競合のP&Gやユニ・チャームは、どう動いてくるか見立てはありますか。

 業界として初めてのことですから、追随してくるかどうかは分かりません。ただし言えることは、原材料価格の高騰という状況は各社同じ。P&Gもアメリカとかでは値上げをしていますよね。海外では値上げをしていて、日本ではやっていないです。

――日本の日用品業界では、値上げは“タブー”とされ、高付加価値商品の発売などで販売単価を上げてきました。なぜ花王は、さまざまな選択肢がある中で、抵抗の強い値上げに踏み切ったのですか。

 紙おむつの枚数を減らすという対応もありましたが、その場合、製造ラインの変更等が必要となり、設備を変える必要が出てきます。

 また、メリーズブランドでは、20年に「メリーズ ファーストプレミアム」というプレミアム品を発売しましたが、既存の主力商品は、(特売などの)販促の対象となりやすい。加えて現状、主力商品の構成比はまだまだ高い。こうした要因もあり、主力商品の値上げに踏み切りました。

 価格と一言で言っても、定番価格と(特売などの)販促価格の2つがあります。店頭の販売価格はメーカーが決めるのではなく、小売りが最終決定しますが、メリーズの定番価格は1280円、販促価格は1080円というケースが多い。我々がお願いしてるのは、定番価格の1280円を10%値上げすることで、100円ぐらい上って1380円となるイメージです。まずは、定番価格を上げようとしていて、販促価格については販促のやり方も含めていろいろと検討中です。

――ただ、スーパーやドラッグストアなどの小売りへの値上げへの抵抗は強い。メーカーが出荷価格を値上げするといっても、店頭価格が上がらないケースは少なくないです。小売りに値上げを納得してもらうために行うことは何でしょうか。