日本人が知らない意外な民主主義の歴史
●多くの人は、民主主義はギリシャの都市国家で生まれたと思っているが、民主主義の起源は現在の中東、メソポタミアである。
●民主主義は、常に時の権力者に敵視されてきた。プラトンやアリストテレスをはじめ、多くの哲学者や知識人も、民主主義は乱暴で不確実性の高い良くない政治制度だと考えた。
●現在、世界最大の民主主義国は、貧困と格差がはびこるインドであり、アフリカのセネガルはイスラム教をベースとした民主主義国家と言える。民主主義はむしろ多様化している。
●アメリカ型の自由な民主主義は必ずしも民主主義の最終進化形態とはいえない。民主主義は新たな独裁者や専制主義者、ポピュリストたちから挑戦を受け、新たな進化を遂げつつある……
古代メソポタミア、ギリシャ・アテネ、イギリス、フランス、スペイン、アメリカの選挙民主主義、ファシズム、帝国主義と民主主義、ポピュリストによる民主主義の破壊、アジア、アフリカの民主主義の勃興、ロシア、中国の台頭からフェイクニュースが渦巻く混乱まで、世界の様々な時代・地域で「民主主義」は立ち上がり、そして時に瓦解してきた歴史が描かれています。オーストラリア・シドニー大学のジョン・キーン教授がシンプルにコンパクトに本書『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』で紹介するエピソードと解説は、欧米中心主義に偏りすぎず、かといってロシア・中国が主張する「特色ある民主主義」のまやかしとは明確に一線を画した、本質的な民主主義観をつかめます。
いま、「民主主義」が注目される時代になった背景には、私たちが抱える不安の存在がありました。
なぜこんなに、民主主義に危うさを感じるようになったのか?
その理由とは?
「民主主義」がこれほど注目される時代になったのは、私たちが不安定な時代を生きているという感覚にさいなまれながら、民主主義が劣勢な立場に置かれていると感じているためではないでしょうか。
【政治的に経済的に】中国のような専制、独裁国家のほうが、決められない民主主義国家よりも有利なのではないか?
【広がる格差】格差を生む資本主義と民主主義は、究極的には相性が悪いのではないか?
たとえば、民主主義を支持する私たちも、このような疑問で揺らいでいます。それでもなぜ、民主主義を擁護すべきなのでしょうか? ジョン・キーン教授は、このような疑問に明快に応えてくれます。
私たちは、民主主義国家である日本に育ちながら、民主主義のことをあまりに知りません。日本人を含む民主主義国の国民は、中国やロシア、そしてかつての民主主義国に誕生した「まやかしの民主主義国家」を率いる専制主義者からかつてなくプレッシャーを受けています。民主主義の歴史を知る意味はまさにここにあります。
議論、意思決定、代表、選挙、議会、権力、平等、多様性……民主主義の本質に迫る、さまざまなジャンルの読者の関心に応えられる、新しい時代の教養書として読める一冊です。