写真:稲盛和夫氏自身の経営哲学を「フィロソフィ」としてまとめた稲盛和夫氏(2012年撮影) Photo:JIJI

稲盛和夫氏の逝去に当たって、数々の論評記事が世に溢れたが、一つ気になっていることがある。稲盛氏の経営哲学である「フィロソフィ」の最初に記された言葉について、私が知るかぎり、どのメディアも触れていないのだ。最初にあるということは、それだけ大事な項目ということだろう。それなのに触れられないのは、取り扱いに困りかねない驚くべき内容だからだ。その真意を、稲盛氏自身の言葉で読み解いていく。(イトモス研究所所長 小倉健一)

メディアで取り上げられない
稲盛哲学に記された「最初の言葉」

 稲盛和夫氏は、2022年8月24日、京都市内の自宅にて、老衰のために永眠した。

 稲盛氏は、京セラ、KDDIを創業して2社を共に世界を代表するグローバル企業(企業の総収益世界ランキングである「フォーチュン・グローバル500」にランクイン)にまで大きくする快挙を成し遂げた。さらに晩年には、経営破綻した日本航空を再建した。

 稲盛氏の死は、新聞やインターネットメディアで大きく報道された。今後は、週刊誌や月刊誌、書籍などで、稲盛氏の元側近、経営者たちによって、稲盛氏の業績がたたえられることになるだろう。

 何より、稲盛氏を信奉するのは、側近、経営者だけではない。稲盛氏の経営哲学は、多くの経営学者たちからも関心を集めていた。

「利益の追求」をするのが資本主義下の会社経営では当たり前のことと誰もが考えていた。ところが、稲盛氏の経営哲学では「利他の心」を掲げ、全従業員の物心両面の幸福を追求したのだ。そして、それが経営の在り方として大成功を収めたのだ。

 稲盛氏はこの世を去ったが、彼が遺(のこ)した「哲学」は、遠く未来にわたって私たちに影響を与えることだろう。

 しかし、一つ気になっていることがある。

 稲盛氏が掲げた哲学=フィロソフィ(※)の最初に記載された言葉である。私が知るかぎり、稲盛氏が亡くなった後、どのメディアもこの言葉について触れていない。

 それは、「『宇宙の意志』と調和する心」だ。

※通常の表記は、「フィロソフィー」だが、稲盛氏は「フィロソフィ」と表記しているため、今回は「フィロソフィ」とする

 フィロソフィの冒頭に出現する言葉としては、あまりに唐突すぎて戸惑うが、稲盛氏自身の解説とともに「『宇宙の意志』と調和する心」を記した真意を読み解いていこう。