9月初旬にドル円は1ドル=144円台に。日本の低金利政策と海外の利上げスタンスを考えると今後も円安基調が続くという予想もある。しかし、ここから海外株や海外債券に投資する場合は、円高に転じるリスクも頭によぎる。投資信託には円高のリスクを回避してくれる「為替ヘッジ型」があるが、安易に為替ヘッジ型を選ぶのはキケン。為替ヘッジ型のリスクとは?

為替が1ドル=140円台の円安に!今後の円高に備えて為替ヘッジ型の投資信託を買うべきか日銀の低金利スタンス維持と欧米の利上げスタンスを考えると今後も円安は続く可能性も。ただいくらなんでも1ドル=144円は行き過ぎ!? 投資家は円高に転じるリスクが頭をよぎるが……。イラスト=橋本聡

為替ヘッジ型は為替を気にしなくて済むが金利差がヘッジコストに

 海外株や先進国債券など海外の債券への投資は原則として外貨建てとなるため、為替リスクが発生する。投資先の通貨が投資した時点よりも円に対して上昇(円安)すればいいが、円に対して下落(円高)すれば、為替差損が生じてしまう。

 足元では円安が続いているが、戦後の日本経済発展の歴史は円高の歴史でもあるため、一般に日本人は海外投資において円高による損失を恐れる傾向が強い。ましてや、9月上旬に1ドル=144円になり、これ以上の円安水準は想像つかない人も多いのでは? そうなると、今から海外投資する場合に考えなければならないのは円高リスクだ。

 こうした不安を和らげてくれるのが、「為替ヘッジ付き(コストはかかるが為替の値動きの影響を概ね回避できる)」の投資信託だ。ヘッジにより為替リスクを気にせず、債券の利回りを狙えるのだ。

 しかし、この為替ヘッジ付き投資信託には問題がある。

 日本円と比べて、短期金利が高い通貨に対して為替ヘッジをする場合には、金利差分が為替ヘッジコストとしてかかる。つまり、金利差が大きい通貨ほどヘッジコストも大きくなるわけだ。

今後金利差が拡大しそうな米ドル建てには要注意

 最も人気なのは米ドル建てだが、2019年にはほとんどなかった日米金利差は、22年5月末現在では2%前後に。つまり、ドル建て資産の為替ヘッジ型は、この金利差がヘッジコストになる。仮に2.0%の利回りが期待できる米国債券に投資しても、為替ヘッジをすると利回りはほぼゼロという計算になる。さらに、運用コストである信託報酬を加味すると利回りはマイナス、つまり「水没」してしまうのだ。

 低金利を維持する日本と対照的に、米国はさらに利上げする方針を明確に示している。今後は、ヘッジコストがもっと拡大する可能性が高いので要注意だ。

 現に主な先進国債券型の為替ヘッジ型の直近1年間の騰落率はマイナスとなっている。

ドル・円のヘッジコストの記載がある投信もある

 このヘッジコストについては、ほとんどの投信が開示をしていないが、中にはちゃんと開示している投信もある。そうした投信を覚えておき、定期的に月次レポートで確認するといいだろう。

 たとえば、米ドル建ての資産に投資する場合の為替ヘッジコストは、「日本金融ハイブリッド証券オープン(毎月分配型)円ヘッジありコース」(運用会社はSOMPOアセットマネジメント)の月次レポートに載っている。22年5月末基準日のレポートによると為替ヘッジコストは1.78%だった。そして、7月末基準日のレポートでは3%超になっている。

 ヘッジコストは、投資する通貨によって異なるので、米ドル建て以外の場合は、買付けた証券会社に問合わせを。

為替が1ドル=140円台の円安に!今後の円高に備えて為替ヘッジ型の投資信託を買うべきか先進国債券のような利回りが低い投資先は為替ヘッジコストで利回りがなくなってしまうので要注意。下のレポートは5月末時点で為替ヘッジコストは1.78%だが、7月末時点では3%超に!
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