音楽ストリーミングサービスとは
別のチャンネルでも収益化が可能に

 前述の「MUSIC STATS 2021」によると、2021年は、TuneCore Japanを利用するアーティストへの総還元額(98億円)のうち、海外からの還元額が初めて10億円を超え、その割合は全体の約10%となった。2020年がおよそ6億円、還元額全体(71億円)の約8%であったのに比べ、大きな伸びとなっている。野田氏は、海外からの収益が増えた大きな要因として、主に2つの要因が挙げられると言う。

「ひとつは、2021年初頭に、中国大手の音楽配信サービスTencent GroupとNetEaseへ、楽曲提供を開始したことです。特にネット発のアーティストが、bilibili(中国の動画共有サービス)を経由して人気を獲得してきている傾向があります。もうひとつは、TikTok、Instagram、YouTubeショートなどのショート動画サービスの収益化に対応したことです。これらの動画サービスに楽曲が使われたら、その再生数に応じて、TuneCore Japanを利用するアーティストが収益が得られるようになりました。これによって、いわゆる音楽ストリーミングサービスとは違うチャンネルで、海外のリスナーから国内アーティストの楽曲が聴かれる機会が生まれました。こういった国内外の動きもある中で、この2022年8月には単月でアーティストへの総還元額が初めて10億円を突破しましたし、利用アーティストの収益は確実に底上げされているといえます」

 2020年代に入り、音楽のビジネスモデルだけでなく、その聴かれ方や届け方にも大きな変化が生まれている。メジャーなレコード会社や事務所に所属せずとも、SNSやショート動画サービスを経由して再生数を稼ぐ「ミドルレイヤー」の独立系アーティストが増えてきている。

 テレビなどのマスメディアでは見えてこない、こうした地殻変動は、徐々に音楽シーンの「草の根」の土壌を変えていくのではないだろうか。