日常と極限状況での「命の保険」としてのApple Watch

 注目したいのは、普及モデルのSEでも衝突事故検出と海外での緊急通報の機能に対応している点だ。従来からの転倒検出機能とともに、不慮の事故に遭遇した際に可能な限りユーザーの命を守ろうとする姿勢を3モデルのすべてで貫いている。

Apple Watchの衝突事故検出機能。車の事故にあったと判定した場合(センサーやジャイロなどで検出)、自動的に電話をかけて緊急通報を行う Photo:AppleApple Watchの衝突事故検出機能。車の事故にあったと判定した場合(センサーやジャイロなどで検出)、自動的に電話をかけて緊急通報を行う Photo:Apple
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 これまで、series 4以降のモデルでサポートされている心電図機能や、同じくseries 6以降のモデルに備わった血中ウェルネス機能を含め、医療・フィットネス関連機能を強化してきたApple Watchに関し、ネットなどでは「健康オタク向けの製品になっている」という見方をする人もいるようだ。しかし、Apple Watchのターゲットは単に健康オタクではなく、「さまざまなリスクから自分の命を守りたいと考えるすべての人々」であるということが、上記の追加機能からも分かるはずだ。

 Apple Watch向けにはいろいろなアプリが存在し、導入することで機能追加ができる。追加すべきアプリがそれぞれのユーザーの趣味や目的に応じて異なるのに対し、「自分の身を守る」ということは人類のほぼ全員にとって最優先事項だと考えられる。したがって、アップルにとって「命の保険となるウェアラブルデバイス」の市場はビジネス上も魅力的であり、ティム・クックが重視する、人類全体のより良い生活や未来を創造していく企業理念とも合致しているのである。