今は昔に比べて10倍、いや100倍くらいのチャンスが広がっているし、特に若いときというのはやり直しがきくものだ。

 私はよく社員に「失敗したくなかったら、たくさん失敗せよ」と言っている。

若い頃には数え切れないほど失敗をしてきた

「失敗は成功のもと」ということわざがあるが、すべての失敗が次の成功へ結びつくわけではない。

 失敗したときによく振り返って原因を分析し、やり方を変えて再びチャレンジしてみる。それを繰り返していくうちに失敗しないコツやうまくいくコツがわかってきて、成功の確率が上がっていくのである。

 世の中には、一発で成功したなどということはほとんどない。これまで失敗することなしにうまくやってきた人もいないはずだ。もしもいるなら、単に何もしていないか、次に波が来たときにはつぶれるはずだ。

 だからこそ、失敗した後の再チャレンジなくして成功を手に入れることなどできないのである。

 失敗から目を逸らさず、何が良くなかったのか、どこに原因があったのかをしっかり検討することが大事である。再びチャレンジする価値があるかどうかも、しっかり吟味する。そうすれば必ず次の方法や解決策が見つかるはずだ。

 ただし、職場での立場が上になり、責任が重くなればなるほど失敗や判断ミスは会社に大きなダメージを与えることになる。だからこそ、若いうちに「致命傷にならない程度の失敗」をなるべく多く経験しておいたほうが良いのである。

 私自身、特に若い頃には数え切れないほど失敗をしてきた。

 こんなこともあった。ある製品を開発しているうちに不安になり、オムロン創業者の立石一真さんのところに相談に行ったのだ。

 立石さんは私の説明を難しい顔をしながら聞いていたが、「成功するかどうかは僕にはちょっとわからんな。君はどうしたいんだ?」と聞くので、製品化したいという思いを滔々と述べると、立石さんは「それならトライしてみる価値はあるかもしれないな」とおっしゃった。

 しかし製品化してみると、見事に失敗した。

 再び立石さんにそのことを報告しに行くと、立石さんはこんなふうに語った。