「それはたいしたもんや。こないだ君が来たとき、僕はあかんなという顔をしていたはずや。それでも君は自分を信じて突き進んだ。なかなか見込みがあるわ」
もしかしたら失敗するかもしれないと思っていても、立石さんは止めなかった。「危ないから止めときなさい」と言っていたら、人は育たないことを知っていたからである。
一番良くないのは、失敗を恐れてチャレンジしないことだ。だめな経営者も同じで、失敗を恐れてリスクをとりたがらない人はけっして成功しない。
こうした経験からも、私は部下が「これをやりたい」と言ってきたときには、失敗する確率が高いと思っても否定せず、「やってみなさい」とゴーサインを出すようにしている。
部下の事業計画を聞いていて、頭の中で「ひょっとしたら3億くらい捨てることになるかもしれないな」などと思いながらやらせることもある。3億円を無駄にしてもこの部下にはいい勉強になるはずだと考えるからだ。そのときは失敗しても、結果的には後に何倍もの利益をあげてくれるのである。
人によっては100万円の損失でもつぶれかねない人もいるため、相手や機会を見極める必要があるが、ただ失敗を避けているだけでは人は成長しないのである。
リーダーの条件は、失敗を経験しているかどうか
そもそも、私は社員に対しては徹底的な加点主義をとっている。
スタート時点では皆ゼロで、挑戦したり成果を出したりすればプラスをつけていく。たとえ失敗しても減点はしないが、何もしなければゼロのままだ。どんなに頭が良い人でも、チャレンジしようとしない人や怠けている人は評価しないと決めている。
ところが、多くの日本企業の評価はこの反対で減点主義である。
減点主義の場合、ミスや失敗をすれば減点されてしまうから、積極的にチャレンジして失敗する人より、最初から何もせず問題なく過ごしている人のほうが出世していくことになる。
そうなると、人は失敗を恐れるようになり、当然チャレンジもしなくなってしまう。しかしチャレンジをしなければ成功することもない。組織も人も停滞したままになってしまうだろう。
私自身、他の人より何十倍ものチャレンジを続け、何十倍もの挫折や失敗を経験してきたからこそ、会社を大きくすることができたのだ。
もちろんチャレンジしても失敗してばかりでは意味がないが、その失敗から学ぶことができれば、次の成功につながっていく。
そして失敗に対しても打たれ強くなり、覚悟ができていく。