日本電産は売上高・純利益「過去最高」でも社長辞任、永守CEO激怒の車載事業の現状Photo:JIJI

コロナ禍だけでなく、円安や資材高の影響も相まって、多くの業界や企業のビジネスは混乱状態にある。その状況下でも、苦境を打破できた企業とそうでない企業との間で勝敗が分かれている。そこで、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は日本電産、村田製作所などの「電子部品」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

日本電産が売上高・純利益「過去最高」
それでも関社長が事実上の“解任”

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の電子部品業界5社。対象期間は2022年2~6月の四半期としている(5社とも22年4~6月期)。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・日本電産
 増収率:20.8%(四半期の売上高5404億円)
・村田製作所
 増収率:マイナス0.7%(四半期の売上高4367億円)
・京セラ
 増収率:16.9%(四半期の売上高4920億円)
・TDK
 増収率:21.5%(四半期の売上高5105億円)
・日東電工
 増収率:6.2%(四半期の売上収益2164億円)

 電子部品業界では、村田製作所を除く4社が前年同期比で増収となっている。中でも日本電産は、四半期ベースで過去最高の売上高を記録した。同じく最終利益も最高益を更新した。

 この日本電産は、22年4月に“衝撃の人事”を断行したばかりだ。

 創業者の永守重信氏の後継者含みで20年4月に日産から招聘し、21年6月にCEO(最高経営責任者)に就いた関潤氏が、1年足らずでCOO(最高執行責任者)に降格。そして永守氏がCEOに復帰したのだ。関氏は社長兼COOに降格後、車載事業などを担当することとなった。

 以降の全社業績は、前述の通り数字上は好調だ。しかし株価下落が続いたこともあり、永守氏は7月20日の決算会見で隣席の関氏を公然と批判。「自分が選んだ後継者であるから任命責任は重大であるから、できるかぎり任せなければいけないと見ていたが、業績はどんどん悪くなり、株価は下がり、時価総額もどんどん下がっていく」と、会見の冒頭に言葉を並べた。

 さらに「それ以上に、決めたものはどんなことがあっても必ずやり抜くという企業文化が崩れ去っていく姿を見て、私は非常に危機感を覚えた」と続けた。

 その会見から1カ月半ほどたった9月2日、関氏が同日付で「業績悪化の責任を取るため」として両役職を辞任することが発表された。

 今回の記事で分析対象とした22年4~6月期は、関氏が日本電産の車載事業を率いていた時期だ。同事業についても永守氏は決算会見の中で「車載事業は(経営のスピードが)遅い」「リーダーが強いリーダーシップを発揮すれば、もっと早く改善できる」と問題意識をぶちまけていた。

 では、実際の「不調ぶり」はどの程度だったのか。次ページ以降では、電子部品業界5社の増収率の時系列推移と併せて、詳しく解説する。