アベノミクスの功罪、岸田政権は「異次元緩和の迷走」から脱却できるかPhoto:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 アベノミクスの功罪を市場関係者の視点で振り返ると、功績は、当時日本企業が抱えていた6重苦からの脱却、多国間協定での貿易振興やSDGs/ESG投資の普及促進などがある。一方、禍根は、痛みの伴う労働市場改革や財政再建の先送り、円安の放置などが挙げられ、これらは岸田政権が取り組むべき喫緊の課題ともなっている。

アベノミクスの日本経済への貢献

 首相在任日数が、2012年末から約7年8カ月に及び、憲政史上最長記録となった安倍晋三元首相(第2次安倍政権)。首相在任中は、自らの経済政策を「バイ・マイ・アベノミクス」と世界にアピールするなど、歴代首相の中でも稀有なリーダーシップを発揮した。首相辞任後は、自民党の最大派閥の領袖となり、政局の中心には常に安倍氏の姿があるといわれるほどの存在感を誇示してきたが、7月に行われた参議院議員選挙の応援演説中に銃撃を受けて亡くなられた。まずはこの場を借りてご冥福をお祈りしたい。

「死せる孔明生ける仲達を走らす」の故事ではないが、亡くなられた安倍氏が首相在任中に掲げた経済政策「アベノミクス」(注1)は、9月に入って過度に振れる円安相場に象徴されるように、今なお日本経済に多大な影響力を残している。そこで本稿では、アベノミクスの功罪を市場関係者の視点で大胆に述べてみたい。