「頭を下げに行ってくれ」
部材を変更することの難しさ
筆者が現場の調達担当者だった22年前、取引先の秋田県の小さな工場に、泣く泣く謝罪行脚に出向いた経験がある。かつて、原子力・軍事・衛星関連のメーカーに勤めていた時のことだ。
扱っているモノがモノだけに、部材の規定が厳格で、幾重もの試験や審査を経たものしか使用できなかった。ハッキリ言ってたいしたことない機能の部材であっても、特定の取引先の特定の部材しか許されていなかった。
まったく同じ機能ではるかに安い他社製品があるのに、「決まった製品」しか使用できない。それは納期も遅いし、やたら高い。
ある時、発注した製品が6カ月後でないと納品できないと告げられた。それでは遅すぎるので、ならば良い機会だと思い、「じゃあ、他社から調達しますので結構です」と取引先に伝えた。
すると、社内は大騒ぎになった。技術者いわく「無理だ。顧客から認定された製品しか使用できない。なんてことをするんだ!」と怒鳴られた。
私は、「でも、こんなの、むしろ高性能の代替品がありますよ」と言い返した。けれども技術者は、「認定されていないから無理だ」の一点張り。
調達部内でも、「代わりの製品はない」「取引先を怒らせた坂口が間違っている」「今すぐ頭を下げて調達『させて』もらえ」と叱責された。そうして私は、泣く泣く秋田まで謝罪に行ったのだった。
時代は令和となり、経済安全保障がかつてないほど重要視されている。米中対立にコロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻、円安に値上げ…。サプライチェーンを混乱に陥れる外的要因ばかりだ。
では実際に、サプライチェーンの修正・変更はできるものなのか。そこには、どんな困難が付きまとうのか。とりわけ、ウクライナ戦争という未曽有の事態から学ぶべきことはなにか。次ページからは、日本の対ロシア輸出額のデータを参照した上で、私たちが教訓とすべきことを考えてみたい。