一帯一路の重荷を
背負い続ける中国政府

 一帯一路は主に陸のシルクロード(一帯)と海のシルクロード(一路)を中国からヨーロッパまで経済的につなぐという構想だが、実際にはアジアやアフリカ、中南米などの新興国を中心に莫大なカネを投資してきた。

 だが、ウクライナ戦争をきっかけに、エネルギーや食糧価格の高騰、金利上昇などが新興国の経済を直撃している。先述のパキスタンや、最近政変が起こったスリランカ、その前に政変が起こったモルディブなど、中国依存が大きい国ほど、危機下で大きな打撃を被っており、一帯一路を受け入れた債務国からの返済が滞ってきている。

 一帯一路受け入れ国には独裁国家が多いが、あまり雇用を生まない中国からの投資は国民から反発されることが多く、反政府的な感情を高めやすくなる。

 また、一帯一路は欧米機関が「採算の見込みが認められない」としたプロジェクトが多く含まれており、実際、中国への借金が膨らむだけで、完成しても採算が見込めないことが多いことが、返済の行き詰まりに拍車を掛けている。

 今後のプロジェクトについて、中国側では融資の基準を厳格化する案も浮上しているが、いずれにせよ、これまで投じた資金の回収が困難になりつつある状況は変わらない。また、今後の投資案件は著しく絞り込まざるをえなくなっている。

 さらに、中国は借金返済を他国より優先することを義務づけて、財政危機の際に「債権国同士で話し合って、返済スキームを作る」といった会議に参加しないことが多い。債務軽減を認めない中国の態度は、一帯一路受け入れ国政府に反発を生む要因となっている。また、中国への債務返済のために増税して国民の反中感情を高めるといった事例も出てきている。