ノーベル経済学賞予想のW達人が今年の受賞者を大胆予想!マニアック過ぎる分析で的中なるかPhoto:123RF

経済学者の坂井豊貴氏と安田洋祐氏の緊急対談が実現!対談後編では、ノーベル賞予想のポイントとなる選考委員から、ノーベル賞と相関が強い別の賞の受賞者まで、ノーベル賞予想を的中させてきた2人による「マニアック過ぎる」予想と分析を公開する。日本人も含めて、具体名で候補者を挙げてもらった。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

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経済学賞に政治的意図はない
予想は選考委員の分析が重要

――ノーベル経済学賞受賞者を予想する上でのポイントを教えてください。

坂井豊貴坂井豊貴(さかい・とよたか)
慶應義塾大学経済学部教授/Economics Design Inc. 共同創業者、取締役/プルデンシャル生命保険株式会社社外取締役/株式会社デューデリ&ディール チーフエコノミスト/株式会社Gaudiy 経済設計顧問/日本ブロックチェーン協会アドバイザー/東京経済研究センター理事。学位:Ph.D. University of Rochester。著書『多数決を疑う』(岩波新書、高校国語の教科書に掲載)、『マーケットデザイン』(ちくま新書)ほか。

坂井 まず、純粋に学術的価値で選んでいます。これまでの選考に政治的意図を入れていないのは、毎年チェックすれば明らかです。

 そして、賞の予想で大事なのは、選ぶのは人間ということ。選考委員です。選考委員が、この人はいいと思っている人を選びます。その選考委員は、スウェーデン人の有力経済学者です。有力経済学者は、山ほどいるわけではありません。だから、選考委員がかなり固定しています。

 選考委員って、ものすごく大変なんです。受賞理由論文Scientific Backgroundを書かないといけないからです。専門家に広く読まれるため、下手なScientific Backgroundは、絶対に書けません。

 別の言い方をすると、選考委員の誰かが責任を持って、受賞理由を何十ページにわたって書ける対象者、内容でないと、ノーベル経済学賞はもらえません。

 また、それなりに時代順に賞をあげています。今のところ、2000年代後半の研究は、賞をもらう可能性は極めて低いです。

――選考委員の構成は?

 正委員が6人で、補佐(追加)メンバーが4人ですね。毎年1人ぐらいは新しいメンバーがいますが、今年はいません。新しい人が選考に加わっていないので、びっくりするような受賞はないと思います。

 ちなみに、これまで委員の常連でしたが、今年は(選考委員に)いない人がいます。外されたわけではなく、休みたいんだと僕は勝手に思っています。特に、公共経済学のエヴァ・モルクさん。昨年は、賞をあげるときに強くプッシュして、Scientific Backgroundも書いたと思うんですよね。大変だったと思うので、今年はお休みされていると予想しています。

 選考委員の人選を毎年見ていると、それなりに読めます。とはいえ、番狂わせも起きます。19年のバナジー(アビジット・バナジー氏)、デュフロ(エスター・デュフロ氏、歴代最年少かつ女性2人目のノーベル経済学賞受賞者)、クレマー(マイケル・クレマー氏)は、誰も予測できなかったはずです。事後に、「ランダム化比較試験は重要だから取った」と振り返るのは簡単です。でも、大真面目に予想したら、受賞はまあ早かったですよね。

安田 早いですね。(19年受賞の)デュフロは46歳での受賞なので、あのアロー(ケネス・アロー氏、1972年に当時最年少でノーベル経済学賞受賞)ですら51歳だったことを考えると、早過ぎます。もちろん、デュフロ単独だったら受賞はなかったと思いますが、これは予想が難しいですね。

次ページでは、今年の予想の最重要ポイントを坂井氏と安田氏に明かしてもらい、受賞者を大胆に予想してもらった。日本人候補者も含めた候補者の具体名と、その理由を経済学に詳しくない人でも分かるようにやさしく解説。読めば受賞レースが楽しくなるだけでなく、近年の経済学の潮流も理解できる。