「吐くのがこわい」を手放すための1つの方法Photo: Adobe Stock

無意識にやっている
2つの行動

 嘔吐恐怖症に悩む方の場合、無意識的に「安全確保行動」「回避行動」と言われる行動をとろうとします。

 これには2つのパターンがあり、

・ビニール袋を携帯しておく
・ミントタブレット菓子の携帯
・頓服薬や制吐剤の携帯

 などの「気持ち悪くなってしまったときのための行動(安全確保行動)」のパターンが1つ。

 そして、

・お肉などの脂っぽいものを食べない
・夜の繁華街などに出向かないようにしている
・公衆トイレに入らないようにしている
・満腹にならないようにしている
・賞味期限切れのものは絶対に食べない
・特定の苦手な乗り物を避ける
・体調不良の人に近づかない(あるいは映像やイラストなどを見ない)

 などの「気持ち悪くなってしまわないための行動(回避行動)」がもう1つのパターンです。

 しかし、これらの行動をとっても「考え方」が変わるわけではありません。

 場合によっては「この行動をしたから(あるいは、この行動を避けたから)、気持ち悪くならなかったのだ」、「私にはこの行動が必要なのだ」と考えてしまい、目指したい考え方である「吐いたり、気持ち悪くなったりしても、大丈夫」というところから、遠ざかってしまうことになります。

 また、たとえば、ミントタブレット菓子を食べたことで気持ち悪くなったことが少し紛れたとしても「自分の力で元に戻れた」という感覚を持ちにくく、いざそういった対策ができない場合は、さらに恐怖感が大きくなる可能性もあります。そして、これらのことは自分ではなかなか気づきにくいものです。

改善の近道は
スモールステップで「手放す」こと

 それでは、改善に繋がる行動をしていくためには、どうすればいいのでしょうか?

 それは、「気持ち悪くなってしまったときのための行動(安全確保行動)」と「気持ち悪くなってしまわないための行動(回避行動)」に対して、「これくらいなら手放せるかもしれない(けど、ちょっと不安)」くらいの段階からスモールステップで手放してみるということです。

 コツは、「ちょっとだけ行動を変える」ことです。ここでいきなり「改善のために、すぐに行動を変えなければいけない!」とスイッチが入り、大きく行動を変えようとする人がいます。

 その意欲自体はいいのですが、実際にそれをやると、潜在意識がものすごく反発して、一気に体調を崩す可能性もあるので「できそうなレベルから、ほんのちょっと変える」という意識が大切です。

 1回の大きなチャレンジよりも、毎日のほんのちょっとずつの変化の方が、少しずつですが着実に変わっていきます。