稲盛和夫,孫正義セレモニーの壇上で笑顔を交わす、稲盛和夫氏(左)と孫正義氏(2017年7月撮影) Photo:JIJI

「経営の神様」と評された稲盛和夫氏の経営哲学には「思考は必ず現実になる」という信念が貫かれている。今回は、「常に明るく」「成功するまであきらめない」と訴え続けた稲盛氏の「超積極思考」をご紹介したい。経営者だけではなくあらゆる人々にとって教訓となるはずだ。(イトモス研究所所長 小倉健一)

「常に明るく前向きに
夢と希望を抱いて素直な心で」

 経営の神様、稲盛和夫氏は、「超」がつくほどの積極思考であった。

「稲盛経営12ヵ条」には、「強烈な願望を心に抱く」(第3条)、「常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心で」(第12条)とある。

 稲盛氏の経営哲学をまとめた「フィロソフィ」には、「常に明るく」「真面目に一生懸命仕事に打ち込む」「潜在意識にまで透徹する強い持続した願望をもつ」「人間の無限の可能性を追求する」「チャレンジ精神をもつ」「成功するまであきらめない」「心に描いたとおりになる」「夢を描く」ともある。

 どうしてここまで「積極思考」の大切さを説くのか。『メディアが報じない、稲盛和夫氏が一番に伝えたかった「驚愕のフィロソフィ」』(ダイヤモンド・オンライン)で詳細は述べたので駆け足で説明するが、稲盛氏は子どもの頃に結核を患い、その際に哲学者・中村天風氏の著作に出合った。以来、天風哲学に傾倒し、自宅の書斎には天風氏の著作が並んでいた。

 天風氏とは、明治・大正期に活躍した宗教家、哲学者だ。ヒマラヤ山麓において、聖者・カリアッパ師によって「ヨガの核心」に到達したとされる。日露戦争でロシアのバルチック艦隊を破った東郷平八郎元帥をはじめ、多くの人が天風哲学に心酔していたのだ。

 その天風哲学こそが、稲盛氏の「積極思考」の源流なのである。

 今回は、稲盛氏が「積極思考」をどのように経営や指導に応用していたかや、天風哲学を支える象徴的なエピソードをご紹介したい。人生で悩みに直面したとき、あらゆる人々にとって教訓となるはずだ。