世話をしてこそかわいい、芋虫画像は別物

 初めて飼育した芋虫がナミアゲハの幼虫であったのはラッキーであったかもしれない。目玉のような模様があって、芋虫本来の不気味さはあるもののあまり毒々しい見た目ではなく、比較的(あくまで、文字通り“比較的”ではあるが)親しみやすいルックスである。
 
 虫をおそろしく感じる理由のひとつに、「連中は大体素早く、次にどのような動きをするかわからない(こちらに突進してくるかもしれない)」という不安が挙げられる。芋虫も放し飼いにしている以上はゆっくり動くとはいえ無軌道なのでやや不穏だが、いったん虫かごに入れてしまえばその恐怖は去る。
 
 また、それぞれの動作の意図が人間に理解しやすい点も、愛着を見いだしやすい。芋虫は主に食べるか、はい回るか、フンをするか、じっとするかのどれかである。娘を喜ばせるために、はい回っている芋虫に「よいしょ、よいしょっ」などとアテレコをしていると、芋虫が本当にそういうつもりで動いているように感じられ、擬人化が強まった。
 
 また、『はらぺこあおむし』で語られていた通りだったが、芋虫は本当によく食べる。見ていて気持ちいいくらい食べてくれるため、こちらも葉っぱを用意するかいが感じられる。そして口を動かして咀嚼(そしゃく)する様がかわいらしい。見ていると「たくさん食べて大きくなれよ」という気にさせられる。妻は「この子、口いっぱいに頬張ってちゃんとモグモグってするの」と破顔していた。
 
 要するに、芋虫(とりわけナミアゲハの幼虫)は愛嬌のかたまりであり、大体何かしら動いているので観察していて飽きにくい。
 
 ただし、これは自分でも意外だったが、芋虫推しとなった今でも、芋虫の画像はダメである。おそらく動いている芋虫こそ、さらに言うならお世話をしてこそかわいいのであって、芋虫の形状それ自体がかわいいわけではなさそうである。