有価証券運用の巧拙が銀行決算の明暗を分けている。静岡県の清水銀行が巨額の債券売却損で赤字に陥った一方、愛媛県の伊予銀行はヘッジなし外債のポジションを増やして巨額の売却益を計上した。市場環境が好転してもなお、評価損の処理が進まない運用下手な銀行はどこか。特集『銀行危険度ランキング2024』(全6回)の#3では、全105行の運用総合利回りランキングを作成し、利回りがマイナスに陥った3行を抽出した。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
運用の巧拙で銀行決算に明暗
評価損の処理が進まない銀行も
2022年以降、欧米の金利が急騰し、外債運用にシフトしてきた国内銀行は債券価格の下落に直面。膨張する評価損に苦慮することになった。
この問題は、昨年に引き続き24年3月期決算でも顕在化した。債券投資の損益を示す「国債等債券損益」は、全105行のうち95行がマイナスに陥った。
特に目立ったのが、外貨建て債券を全て売却して、59.7億円もの損失を計上した静岡県の清水銀行だ。その結果、同行は単体の当期純利益が事前予想の8億円の黒字を大幅に下回る30.7億円の赤字となった。このほか、国に公的資金返済の延長を求めた山形県のきらやか銀行も、81.7億円の債券売却損を計上している。
片や、同項目で95億円超の売却益を計上した地方銀行もある。愛媛県の伊予銀行だ。同行は、地銀の債券運用では主流の「持ち切り前提」ではなく、市場の局面に応じてポートフォリオを動かしている。
親会社であるいよぎんホールディングスの三好賢治社長は「21年3月に起きたエジプト・スエズ運河でのコンテナ船座礁事故を契機に、グローバルの物流がインフレや金利上昇のボトルネックになると考え、警戒した」と話す。
伊予銀行の運用部門は同時期から市場分析を重ね、ヘッジ付き外債への投資を抑制した。代わりにヘッジなし外債のポジションを徐々に増やし、為替が円安に振れたことで売却。その結果、巨額の運用益を計上するという、他の地銀には見られない運用巧者ぶりを発揮した。
運用の巧拙が地銀決算の明暗を分けることは明らかだ。そこで24年3月期の最新決算を基に、運用部門の収益力を示す全105行の運用総合利回りランキングを作成した。次ページでは、市場環境が好転し、株価が絶好調でもなお評価損の処理が進まず、運用総合利回りがマイナスに陥った3行を公開する。