多くの大人にとって、芋虫の姿、形はゾッとするものである。しかし、無垢な子どもたちは芋虫に愛着を寄せることがある。子どもが「この芋虫を飼育したい」と言ったとき、親はどのように葛藤し、それを受け入れるか。筆者はこの経験を通して、思わぬ気づきを得た。(フリーライター 武藤弘樹)
ご近所さんから芋虫、しぶしぶ開始された飼育
ご近所さんが、4歳の娘に芋虫をくれた。
虫と縁遠い生活を送る人には、「誰かが誰かに芋虫をあげる状況」や「“芋虫をあげる”とはそもそもどういうことか」がよく理解できないと思うが、そういうものとして捉えておいていただきたい。筆者が住む片田舎には虫がふんだんにいて、子どもにとって虫はお友達のようなものだ。
木の棒に乗っかるそれは丸々と肥え太っており、筆者と妻は戦慄(せんりつ)した。
芋虫といえばあのおぞましいフォルムであり、木の棒の上を無目的にはい回る様子が不気味さをいやが上にも増している。娘が適当に飽きたところでその辺の木に移して野生に返しておこうともくろんだが、娘は飽きる前に「うちに連れて帰る」と、両親が最も恐れていることを言い出した。かくして、我が家で芋虫を飼育することになった。
するとどうだろう。途中経過をすっ飛ばして結論から書くが、芋虫がかわいく思えるようになったのである。筆者よりも格段に虫が嫌いでアリを目撃しただけで悲鳴を上げる妻が、虫かごの前に顔を置いてうっとり芋虫に見ほれるまでになっている。
妻のその様子は夫としてやや心配ではあるのだが、人をそうさせるポテンシャルを芋虫が秘めていることは、筆者がその数日間で身をもって学んだものでもある。本稿では、虫嫌いの人でもハマるかもしれない芋虫、および芋虫飼育の可能性について論じたい。