写真は今夏。「暖冬になると、前年同月比で節電3%以上の目標は、節電の意識なくクリアでは……」と業界関係者すら首をひねる写真は今夏。「暖冬になると、前年同月比で節電3%以上の目標は、節電の意識なくクリアでは……」と業界関係者すら首をひねる Photo:JIJI

今冬の電力危機を乗り越える策の一つ、電力会社等の「節電プログラム」。電力使用者の節電達成時に政府が配る補助金スキームが発表されたが、“ある規定”に戸惑いが広がっている。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

家庭で最大「5000円+α」の
政府補助

 今冬は特に厳しい電力需給見通しとなっている。最大電力需要に対する供給の余力を示す「予備率」の見込みは10年に1度の厳冬になった場合、2023年1月に東京と東北エリアで4.1%、中部・北陸・関西・中国・四国・九州エリアで4.8%となっている。

 そのため電力需給逼迫時には、電力使用者へ素早く節電を促す仕組みが重要となる。政府は電力会社等が電力使用者向けに実施する「節電プログラム」に対し、各種の補助金を出して後押しをする。

 政府の支援対象は大きく分けて二つある。「(1)電力を使用する家庭・法人の節電プログラムへの参加表明」に対してと、「(2)実際の節電プログラム目標の達成」に対してだ(下図参照)。(1)には家庭で2000円、法人で20万円の補助金が出て、電力会社等はそれらを原資に電力使用者へのポイント支払いなどをする。(2)は少し複雑なスキームなのだが、「(A)前年同月比で3%以上の節電」を達成した場合、家庭で月1000円、法人で月2万円を補助。「(B)指定した時間帯の節電」を達成した場合、1キロワット時当たり最大20円(需給の逼迫注意報・警報発令時は同40円)を補助する。

 電力会社等が(A)(B)二つの節電プログラムを実施する場合は、両方の補助金を得ることが可能だ。ただし今夏までに独自に実施した各社の節電プログラムは(A)に類似した仕様が多く、今冬も(A)のみ実施の社が大半とみられる。

(B)のような仕様だと電力需給逼迫にピンポイントで改善効果が期待できる半面、システム構築にコストや人的リソースが割かれる。(A)だとピンポイントの効果には疑問符が付くが、「電力会社の社員がエクセル表で処理できるほど単純」(ある節電システムベンダー)だといい、導入の容易さが(A)が選ばれる背景にある。

(2)のスキームの事業者向け説明会が10月11日に開かれた。

 そのうち(A)に関して当日示された“ある規定”を見て、事業者側から多数の戸惑いの声が上がった。