倒産「六重苦」が企業に迫っている。コロナ禍により壊滅的影響を受けたはずの2021年の倒産件数は、実は歴史的低水準だった。背景には、融資の優遇など政府のがむしゃらな対応があった。そんな状況から一転、22年度上半期の倒産件数は増加に転じている。ゼロゼロ融資の終了や円安、物価高……。本来ならば成長力の低い企業を無理やり延命させてきたのならば、たまったマグマは、いつか大きく噴火する可能性がある。特集『選別開始!倒産危険度ランキング2022』(全20回以上)の#13では、23年に企業の倒産増加が必至となる「六重苦」など最新の倒産事情を追った。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
4年で売上高10倍のホテルショコラ
過去最高決算の2カ月後に「円安倒産」
円安倒産が、北海道の自治体に思わぬ混乱をもたらしている。
「民事再生手続き開始を東京地方裁判所に申し立てました。債権者説明会を8月3日に開催いたします」
7月29日、北海道長沼町役場の産業振興課にこんなメールが届いた。メールの主は英国のチョコレートブランド「ホテルショコラ」を展開するホテルショコラ日本法人だ。
ホテルショコラは7月28日に東京地裁に民事再生法の適用を申請し、8月4日に民事再生開始決定を受けた。東京商工リサーチによれば、負債総額は51億円だ。
ホテルショコラは、英ホテルショコラグループ(HCUK)と経営陣が共同出資して2018年7月に設立された。売上高は19年6月期の2億円から、22年6月期は22.6億円と10倍以上に急成長。過去最高の売上高となる決算をたたき出してから2カ月足らずで倒産へと追い込まれた。
倒産件数が55年ぶりの低水準だった21年度から一転、企業の倒産がじわじわと増えている。帝国データバンクによれば、22年度上半期の倒産件数は前年同期比6.3%増の3123件で、3年ぶりに増加に転じた。
新型コロナウイルス感染拡大という未曽有の危機から企業を救うため、国はゼロゼロ融資や補助金など手厚い支援策を用意した。企業は売上高が落ち込んでも生き延びることができ、倒産件数は歴史的な水準に抑え込まれていた。
コロナ禍からの出口が見え始め、ゼロゼロ融資の終了など支援策が一段落し始めた。そこに、経済環境の激変が襲い掛かった。怒濤のように進行する円安に、急速な物価高……。倒産を増やすさまざまな要因が一気に噴出し、「六重苦」となって企業を追い込んでいる。
ホテルショコラの倒産について、「典型的な円安倒産だ」と東京商工リサーチの友田信男情報本部長は指摘する。
なぜホテルショコラは倒産し、その余波が北海道の自治体に及んだのか。次ページでは、23年に企業の倒産増加が必至となる「六重苦」や、信用調査会社が警戒するポイントなど、最新の倒産事情をお届けする。