就活前に「不都合なつぶやき」削除、学生が神経とがらすSNSトラブル防衛術Photo:Milatas/gettyimages

「面接先・内定先の企業にSNSをチェックされる」。その恐怖心は学生たちに、SNSとの付き合い方を見直す機会をもたらしている。中には、別のユーザーと論争したときの投稿を就活前に削除した若者もいるほどだ。一方、「自分は大丈夫」という考えの下、安易に「おふざけ動画」を投稿し、企業や周囲との関係に問題が起きている若者もいる。そうしたトラブルを防ぐには、具体的にどう対処すればいいのか。(ジャーナリスト 瀬戸久美子)

SNSにアップした「おふざけ動画」が
内定先にチェックされる時代に

「知り合いの先輩、飲み会で羽目外した動画をSNSに載せたのがバレて、内定先から厳重注意受けたらしいよ」

 就職活動中の大学生の間では時折、こんな話題がキャンパス内を駆け巡る。「SNSに注意せよ」とは、もはや就活中の学生たちの常識だ。

 この10月に、企業から正式な内定通知を受けて安心している学生や親御さんも多いだろう。だが、内定後も油断はできない。SNS上の「不都合な投稿」はその人の評判をおとしめ、キャリアを傷つける可能性がある。無論、社会人になってからも、だ。

「SNSは、社会的なステータスを動かす力を持つようになった。インターネット上の不用意な書き込みによって職を失うことがあるのは、誰もが認識しているところでしょう」

 そう話すのは、デジタル被害対策事業を手がけるシエンプレ デジタル・クライシス総合研究所で主席研究員を務める桑江令氏だ。実際、過去の不用意な発言がもとで著名人が要職を解かれたり、謝罪に追い込まれたりしたケースは後を絶たない。

 日本では2022年7月7日に改正刑法の一部が施行された。これにより、誹謗中傷などへの対処が厳格化されるなど、SNS上の言動に対して法的な拘束が入りつつある。

 たとえ個人のアカウントであっても、モラルに反した言動が明るみに出れば投稿した本人はもちろん、勤め先の企業や団体も社会的制裁を受けることがある。しかも、「勤務先が大手企業であるほど、社員の不適切な言動をニュースで取り上げられやすい」(桑江氏)。

 社員のネットリテラシーの欠如は、企業にとって重大なリスクになる。できることなら、採用前に志望者の人柄やモラルをチェックしておきたい――。そんな企業の悩みをビジネスにしようと、最近では就活生のSNSを「裏垢」(裏アカウント)まで探し出し、その人のネットリテラシーの有無などを分析する企業も出てきている。