焼肉・韓国料理チェーン店「KollaBo」を運営する韓流村代表の任和彬社長焼肉・韓国料理チェーン店「KollaBo」を運営する韓流村代表の任和彬社長

グルメサイトのガリバー、
食べログを訴えた理由

「私の人生が変わりました」。インタビューの際、株式会社韓流村(はんりゅうむら)代表取締役、任和彬(イム・ファビン)氏がターニング・ポイントの日をそう振り返る。

 それは2019年5月21日(火)、出張のため空港にいたときに、携帯電話が鳴った日だ。「見ましたか」と、電話先の事業部長に聞かれた。

 任社長は移動中だったこともあり、ただちに食べログの点数を確認、軒並み点数が下がっていたのがわかり、血の気が引いた。

 日本全国、飲食店の経営者や店長など経営幹部であれば、隔週の火曜日に行う“儀式”があるという。それは、食べログで自店の点数が、どれだけ上下したのかをチェックする作業だ。現在、食べログでは月2回、第一と第三火曜日に点数の更新がある。一喜一憂するのは、点数の上げ下げが売り上げに影響があるからだ。

 飲食業界では店舗規模にもよるが、食べログの点数が0.1ポイント違えば、売り上げが月100万円単位で上げ下げするといわれている。それだけ、特に予約を伴う飲み屋系飲食店の多くは、食べログの点数がお店の死活問題になり得るのだ。

 この日、任氏の韓流村が運営する焼肉・韓国料理チェーン店「KollaBo(コラボ)」の食べログの点数が下がっており、それは、尋常ではない落ち込みであった。その後、調べてみると、他のチェーン店の多くが下がっていることがわかった。

 だが、特に、KollaBoでは当時26店舗のほぼ全ての点数が下がっており、その中でもターミナル駅に多く立地する旗艦店8店舗が、平均3.50点から3.04に下がっていた。

 点数が低いことにより、任社長いわく「KollaBoはおいしくない店」だと食べログで比較して予約する客から評価され、悪く判断されてしまう影響が大きいと予想された。つまりは予約されない、避けられてしまうお店になるのだ。

 ちなみに「KollaBo」の由来は、“Korea×Collaboration”にある。韓国を訪れればよくわかるが、ビビンバならビビンバの専門店で食べるといった具合で、現地の飲食店では食の専門店が基本だ。そのため、任社長は本場の韓国でそれぞれの専門メニューがある有名店と提携、料理とレシピの提供を受けたコラボレーションレストラン・カフェを日本でオープンした。顧客層のメインは女性で、良質の牛肉と韓国専門店の料理をリーズナブルに提供、任社長が言うには「焼肉業界のユニクロ」としてリピーターが多い。

 任社長の主張は、「プレミアムサービス会員はすでに利用者は頭打ちで、もうこれ以上は増える見込みがない。飲食店の広告収入を増やすべく、特にチェーン店を狙い撃ちして、上位ランク(プレミアム5と10)へ誘導する手はずだったのでは」ということだ。これは食べログのIR(株主や投資家向け広報)資料のデータで説明ができてしまう、と任社長は言う。

 その後、2020年5月22日に、韓流村はカカクコムが運営するグルメサイト「食べログ」がチェーン店のみ点数を差別的に下げる不当なアルゴリズムを設定・運用していると提訴した。

 韓流村は、食べログがユーザーの付けた点数とは関係なくチェーン店のみ点数を差別的に下げる行為が、「独占禁止法(以下、独禁法)上の差別的扱い」および「独禁法上の優越的地位の乱用」に当たると訴えた。