その後、2年続いたこの裁判の中で、裁判所は公正取引委員会(以下、公取委)が21年9月16日に東京地裁に提出した「訴訟に関する意見書」に基づき、10月に食べログに対して関連アルゴリズムを開示するよう要求した。

食べログ裁判で存在感を示した
公正取引委員会

 この裁判で重要な役割を担ったのが、公取委である。20年3月18日、公取委から「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査報告書」が提出されていなかったら、5月に訴訟はしなかったと任社長は断言した。

 この報告書では、飲食店の実情を調査した上で、「優越的地位にあるといえる飲食店ポータルサイトが存在する可能性は高い」と指摘した。検索結果の表示に関するルール(アルゴリズム)についても、一定の場合には、独禁法に違反する可能性があると記載されている。事例をまとめることで、グルメサイト業界に自主的な改善を促す狙いがあった。任社長は、この報告書が最終的な裁判を起こし、食べログに立ち向かう決め手になったと話す。

 裁判では膠着(こうちゃく)状態が続き、21年4月には韓流村側が元・公取委の事務総局審査局長の南部利之氏の意見書を提出、「独禁法に違反するという、原告の主張は妥当」と述べられていた。

 そして、裁判所が公取委に意見を求め、同年9月に公取委の古谷一之委員長名義で意見書を提出、争点となる点数については取引であると認めたのである。

 22年6月16日に大手グルメサイト、食べログが、飲食店の評価の点数を算出するシステムを一方的に変更、低評価したとして、裁判に判決が言い渡された。東京地方裁判所は、アルゴリズムを一方的に変更することが「優越的地位の乱用に当たり独占禁止法に違反する」と判断した。そして、食べログを運営する会社、カカクコムに焼肉・韓国料理チェーン運営会社、韓流村の売り上げが大幅に減ったとして3840万円の賠償を命じた。ただし、変更後のアルゴリズムの使用差し止めは認めなかった。

 公取委は行政機関の中では、メジャーな存在とは決していえない。しかし、企業活動を監視して取り締まる組織で、商取引やビジネス競争内で起こり得る不正を厳しくチェック、企業への立ち入り検査も行う。公正で自由な競争原理を促進、独占や談合などのルール違反を許さない。国民経済の発達を図ることを目的として設置、内閣府の外局(行政委員会)となっている。つまり、スポーツでいえば、レフェリー(審判)の存在だといえるであろう。最近では、回転ずしスシローのテレビCMが“おとり広告”(キャンペーンのすしを多くの店舗で販売していない)であるとして、として公取委が調査、消費者庁が措置命令を出した。