「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。
同じ返事でも“文字と声の違い”が出る
【前回】からの続き 離れて暮らす高齢のご両親への電話による“聞診”で、親御さんの声から健康状態や認知機能がどうなっているかを推し量ることができます。
メールやLINEで「元気だよ」と返信をくれたとしても、実際に声を聞くと力なく「元気だよ」という感じだったら、子どもに要らぬ心配をかけまいと、カラ元気を出しているだけかもしれません。そういう面からも、メールやLINEの文字情報だけでなく、電話でじかに会話をするほうがいいと私は考えています。
“オレオレ詐欺”の被害防止に一役
電話での会話を欠かさないようにしていると、いわゆる“オレオレ詐欺(振り込め詐欺の一種)”の被害防止にもつながります。オレオレ詐欺の典型的な手口は、子どもや孫になりすまし、「会社のお金をなくして補塡(ほてん)しなくてはならない」とか「交通事故の示談金がいる」といったウソをついて、お金を振り込ませるというもの。
その被害者の大半は高齢者ですが、認知機能が低下していると、オレオレ詐欺にひっかかりやすくなります。狡猾(こうかつ)な詐欺師は、「風邪をひいて声が変わった」などとウソをつきながら、子どもや孫になりすますようです。
“ボケ防止”と“詐欺被害防止”両方の効果
しかし、毎日のように子どもや孫と電話をしていれば、そうした見え透いたウソに騙される確率も下げられるでしょう。親御さんや祖父母にしてみれば、めったに連絡をしてこない子や孫が電話をくれただけでも嬉しい気分になるもの。
窮地に立たされた子や孫が、老いた自分を頼ってくれたと思うと、なんとか役に立ちたいと考えるのが人情です。そうした親心につけ込んだ詐欺被害を防ぐためにも、離れて暮らす子や孫は、ぜひ両親や祖父母と連絡し合うように心がけてください。
※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)