米国の軍産複合体にとって
うまくいきすぎた「戦争ビジネス」

 加えて、以下の事情が戦争をより身近にしている。

 現在ウクライナで行われている戦争は、当事国はウクライナとロシアだ。しかし、実質的には米国とその同盟国がウクライナを使ってロシアと戦っている代理戦争といえる。そして、米国の軍産複合体(この言葉を初めて使ったのは故ドワイト・アイゼンハワー元米大統領だといわれている)にとって、この戦争はビジネスとしてこの上なくうまくいっている。

 米国の軍産複合体は、その生産力と経済を維持するために過去に複数の戦争や紛争を必要としてきた。しかし、その担い手たる米軍の兵士に一定以上の犠牲が出ると、反戦の気運が高まってビジネスが挫折してきた。

 しかし、ウクライナの戦争では「米国人の血」を流すことなく、米国の武器がどんどん売れている(外国に買わせようと、米国政府の支出だろうと、武器産業にとっては「売り上げ」だ)。これは彼らにとって、かつてなくうまくいっている「ビジネスモデル」だ。

 ついでに言うと、米国のエネルギー産業や穀物ビジネスも今回の戦争で商品の国際価格が上昇して大いにもうかっている。

 経済的常識からいって、こんなにうまくいっているビジネスモデルに「ほどほど」は存在しない。「軍産複合体」は一人の人間の人格に例えられるようなシステムではない。「やり過ぎると心配だ」などと本気で考えたりはしないのだ。既存の個人が権益を手放したくないのに加えて、「これからもうけよう」という個人や会社が新たに参入し続ける。彼らはフレッシュでハングリーなので、ほどほどでやめておこうという発想や行動にはならない(一時の不動産業界を想起されたい)。

「米国は」を主語にするのが適当かは微妙だが、彼らは既に台湾に武器を売るビジネスをまとめつつある。また、従順なお得意さまである日本には国防費を国内総生産(GDP)の1%から2%に倍増させる方針をのませつつある。見込み客の購買予算を倍増させることに成功した。

 直接の戦争だけでなく「純粋にビジネスとしても」、米国の(軍産複合体の)動向に目を向けないのは考えが乏し過ぎる。

 彼らがどう動くか、それが自分の将来とどう関わるか、そしてビジネスにどう影響するか。これらを真剣に考えることは就職活動にとって無駄ではない。